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瑞穂で天皇杯という選択肢もあったが、チームが勝ち上がるってくれることを信じて、昨日の準決勝に引き続き港サッカー場で高円宮杯(U-15)東海大会・決勝を観戦。決勝の相手は準決勝と同じ岐阜県代表の岐阜VAMOS。クラ選の東海地区予選を見た時には、引いて守ってカウンター狙いのVAMOS相手に名古屋が大苦戦を強いられた印象だったが、逆にVAMOSに対して危険な相手だと感じる場面も少なかった。あれから4カ月で両チームの力関係はどう変わっているのだろうか。 名古屋のスタメンは昨日と同じ。 北川 中根 岩田 真柄 富田 野崎 樫尾 ニッキ 大谷 鈴木 渕上 クラ選では名古屋に負けたことによって全国大会出場を逃したVAMOSにはその雪辱に燃える思いがあるだろうし、名古屋にとっては東海チャンピオンになって本大会へというモチベーションがあるこの試合。しかしここまで余裕の勝ち上がりで前日の準決勝でもVAMOSと並ぶ岐阜県クラブユースの雄・JUVENに大勝した名古屋よりは、そんな「東海無双」の名古屋にひと泡吹かせてやろうと乗り込んで来たVAMOSの方が気持ちは勝っていたようだ。球際の競り合いでも名古屋はイマひとつ激しく行けていないし、何よりキックオフから完全に気持ちが「受け」に回ってしまっている。この決勝戦でよりアグレッシブにそして主体性を持って試合を進めていたのはVAMOSだった。 VAMOSはハイプレッシャーからボールを奪い執拗に名古屋DFの裏を狙ってくる作戦。スピード勝負に持ち込めば名古屋の強力なCBコンビに対しても十分勝算アリと踏んでいるのだろう。そして前回対戦では迫力に欠けていたカウンターも、攻撃に対する人数の掛け方がまるで別のチームのように分厚くなっていた。ボールホルダーに対して周りの選手が顔を出してパスコースを作る忠実な動きが目立ちテンポ良くパスをつないで来るVAMOSは、名古屋の最終ラインが高い位置にあれば1本の長いタテパスでその裏を狙い、逆に深ければバイタルエリアへとボールを運んで名古屋DFを誘い出しワンツーなどを使って裏へと抜け出してGKとの1対1の状況を作り出す。VAMOSが奪った1点目もまさしくそんな形で、前におびき出された名古屋DFラインの裏に上手く飛び出した10番の選手が名古屋GK渕上と1対1の状況から冷静にシュートを沈めていた。 対する名古屋はVAMOSとは対照的にボールを持っても個々の判断が遅れがちで球離れが悪くボールを引き出すような動きも少ない。こうなるとせっかくボールを保持していても簡単にVAMOSの守備網に引っ掛かってボールを奪われカウンターを喰らうというサイクルにハマってしまう。そしてマイボールになると2トップと両SHの4人が前線に張り出す名古屋の攻撃は、その過程でボールを失うと前線に4人の選手が取り残される形になり、切り替えの早いVAMOSに対してあっという間に数的不利の状況を作られてしまう。いくらこのチームのWボランチがハードワークを生業としているとは言え、中盤の広いスペースを二人でカバーするのは無理がある。そして名古屋のWボランチが慌ててボールホルダーに対して寄せて来たところで、余裕のあるVAMOSの選手達は巧みなボールコントロールでアッサリとそのプレッシャーをかいくぐり、パスをつないでいた。 名古屋にとってそんな嫌な流れを押し戻したのは昨日の試合でもキレキレだった左SHの岩田。この試合の後に行われた表彰式で今大会のMVPにも選出された岩田は、調子自体の良さもあるのだろうが、このレベルでは突出した個の能力の高さを発揮しており、今大会ではチャンスメーカーのみならず積極的にゴールに絡む動きが目立った。同点ゴールのシーンでは、タテ1本から北川が後ろにスラしたボールを拾った野崎が相手の注意を引き付けておいて岩田にパスを送ると、これを受けた岩田はPA内に侵入して鋭い切り返しでGKまで翻弄。完全に抜き去った後で冷静にゴールを叩き込んだ。さすがにこの年代の代表候補だけあって格が違う感じだ。 そしてそんな岩田は、その後再び突き放されたりとなかなかペースの上がらないチームの中でも文字通り孤軍奮闘していた。前半に3ゴールを奪った名古屋の残りの2点もいずれも岩田によってもたらされたもので、珍しくワンタッチでテンポ良くパスがつながって同点に追い付いたシーン(二点目)では、クサビに入った中根が真柄にボールを落とし、これを真柄がワンタッチで前線に送るとそこに入り込んでいた岩田が落ち着いて目の前のDFを外しゴール右隅へと蹴り込み、さらに三点目は野崎が横にドリブルしながら入れたクサビのボールを相手DFを背負いながら中根がキープしそこから出てきた絶妙なタイミングでのヒールパスをDFラインの裏へと抜け出した岩田が受け切り返して右足に持ち替えてから豪快にネットを揺らしたのだった。 名古屋としてはむしろやられっ放しだった印象の方が強いぐらいだが、岩田のハットトリックの大活躍によって名古屋は3-2とリードを持ったまま前半を折り返した。 二度先行を許す展開ながらも前半のうちに逆転に成功し、ハーフタイムを挟んで後半少しは落ち着いて試合が進められるかと思った名古屋だったが、後半もやはりVAMOSのペースは変わらなかった。ハイプレッシャーによって相手のパスミスを誘ったり相手が苦し紛れのタテパスを蹴って来たらそれを「前で」インターセプトする守備といい、ピッチを広く使ってボールを動かしてゲームを組み立てる攻撃といいそれは名古屋のお株を奪っているようですらあった。逆に名古屋は悪い形でボールを失っているという面はあるにせよ、前線からのプレスがハマらないので、中盤から後ろの対応が後手後手になっていて、その結果1対1での主導権もVAMOSに譲るという悪循環のようにも見えた。 しかし試合を決める力という点では個の能力に勝る名古屋の方が上。前半にも何度か見られたように良い流れさえ作れば得点に結び付けることが出来る。そして相手からボールを奪ってカウンターから中央で途中出場の曽雌→北川→中根とつないで最後はファーサイドからPAに飛び込んで来た真柄にボールが渡ると慌てたVAMOSのDFに真柄が倒されてPKから追加点。その後タテ1本で裏を取られて1点差に追い上げられたものの、左サイドからドリブルでカットインした北川が思い切って放ったミドルがGKのファンブルを誘ってそのままゴールに吸い込まれてVAMOSを振り切ることに成功した。 最終的なスコアは5-3。サッカーに判定はないが内容だけならVAMOSの方が上回っていた。それも東海無双の名古屋に真っ向から挑んだ上でだ。それでも名古屋はVAMOSを力でねじ伏せ当面の目標だった東海チャンピオンを達成したところには王者としての風格すら漂う。さらなる大きな目標に向けてこの苦戦が全国大会で生きることを願いたい。 ![]()
世界的な不況の余波はユースサッカーにも及んでいる。高円宮杯U-18では昨年まで優勝チームと準優勝チームに与えられていた海外遠征が優勝チームだけに限定されてしまったし、この高円宮杯U-15東海大会にしても昨年までは各県の代表2チーム(計8チーム)が二つのグループに分かれてグループリーグを戦った後各グループ上位二チームが順位決定トーナメントを行っていたのが、今大会では8チームがいきなり一発勝負の決勝トーナメントに臨む形に変更になった。名古屋は先週の一回戦で無事磐田ジュニアユースを破り本大会出場を決めたものの、もしその試合で敗れるようなことがあればその時点で本大会出場への道が途絶えていたことになる。そして実際に、名古屋と同じく夏のクラ選ベスト4にして静岡チャンピオンのACNジュビロ沼津は愛知FCに1-2と敗れ全国への望みを断たれてしまった。勝負の世界の厳しさと言えばそれまでだが、このような環境下で果たして選手達は溌剌とプレー出来るのだろうか。 これと同様のことは全国大会にも起こっている。昨年までは各グループの2位までが決勝トーナメントに進出していたのに対して今年は各グループの1位のみが決勝トーナメントに進出し8チームで覇を争うことになった。これはグループリーグでの一敗が限りなく絶望を意味するということだ。各チームはグループリーグの一試合目からトーナメントのつもりで戦わなくてはならないだろう。もちろん昨年の名古屋U-15のような例(グループリーグ初戦で京都に敗れながら最終的にはグループ首位になった)もあるが、あれは“死のグループ”が結果的にプラスに作用した特異な例。強豪チームが星の奪い合いを行うことで一敗の持つ意味が弱まっていた。これが二強二弱だったらどうか?二強の直接対決で敗れたチームはその時点で敗退となる可能性がかなり高まる。 そんな過酷な全国大会を見据えればなおさら、名古屋U-15がこの東海大会で優勝出来るか出来ないかには大きな意味がある。東海一位になれば、グループリーグで関東や関西の一位のチームと当たらなくて済むし(とは言ってもクラ選ファイナリストの神戸や京都と同居する可能性はあるが・・・)、8つあるグループのうち二つのグループでベニューとなっている愛知会場(港→港→瑞穂北 か 瑞穂北→瑞穂陸→瑞穂陸)を使える可能性も高まるからだ。本大会の決勝トーナメントまでを視野に入れるならこの東海大会は是が非でも優勝し東海1位として本大会に臨みたい。 と前置きが長くなったが本題である今日の準決勝。対戦相手は一回戦で三重のFC四日市を延長の末に下したJUVEN.F.C。名古屋のスタメンはこんな↓感じ。 北川 中根 岩田 真柄 富田 野崎 樫尾 ニッキ 大谷 鈴木 渕上 一時期の港サッカー場と比べればピッチは信じ難いほど青々としているが、昨日から降り続いた雨の影響でピッチには所々水が浮いている状況。特にコーナーフラッグ付近ではアップの時からボールが止まってしまうシーンが目立った。決してプレーしやすいコンディションではないだろうが、選手達はこのような条件下でどれだけいつも通りのプレーが出来るのかその真価が試されることになる。 試合はキックオフから名古屋がピッチを広く使ってボールを動かしJUVENディフェンスを崩しに掛かる。それはまるでボールをピッチの隅々へと動かしてそれぞれのエリアのピッチコンディションを測りながらゲームを進めているかのようでもあった。そして左右に大きく揺さぶっておいて相手のディフェンスが横に広がったところで真柄が二度三度とDFラインの裏にスルーパスを狙っていたが、ペナルティエリア内はコーナーフラッグ近辺とは対照的に全くボールが止まる気配がなく、鮮やかにDFの間を切り裂いたスルーパスがそのままゴールラインを割ってしまうようなシーンが連発していた。 そしてそうこうしている間に先制点はなんとJUVENに転がり込む。後方からのタテパスに対してニッキと大谷のギャップに上手く抜け出したJUVENの9番が並走する大谷から半歩抜け出して右足を一閃、やや右寄りでペナルティエリアに入ったあたりの位置から放たれた豪快なシュートは逆サイドネットに突き刺さった。サイズもあって身体能力に優れるJUVENの9番はその後も何度かタテ1本から名古屋陣内へと一人切り込んで行くシーンが見られたが、ピッチコンディションを考慮すればタテ1本から思わぬピンチを招いてしまう危険性は十分に想定されたはずで、それに対して前半の名古屋の中盤が安易にタテに蹴らせてしまっているシーンが目に付いた。もちろん通常であればタテに入って来るボールに対してそれを弾き返す力に優れるCBコンビの特性を考慮してこれで問題ないのかもしれないが、この試合に限ってはタテに蹴らせない守り方も必要だったかもしれない。 しかし不測の失点を喫しても名古屋の選手達は全く落ち着いていた。すぐさま右サイドをエグって深い位置から折り返した野崎のクロスからゴール中央で中根が合わせて同点にすると、その後はセットプレーを中心に前半だけで5得点。後半に入っても立ち上がり早々に左サイドを突破した岩田のクロスに中根がダイビングヘッドを決めてゴールラッシュの口火を切ると、2年生中心のメンバーに切り替えながらさらに2得点を奪うことに成功。合計8-1の快勝で名古屋は決勝へと駒を進めたのだった。 中でも特筆すべきは一人で4ゴールを叩き込んだ中根。この試合について言えばまさに「研ぎ澄まされている」と表現するのがピッタリだった中根は、ゴール前で類稀な得点感覚と泥臭さそして勇敢さを発揮し、エース(青山)不在のチームを救った。そしてクラ選の時にも書いた気がするが、中根のプレーにどこか駒澤スピリットを感じてしまうのはなぜだろうか。 また右からのCKを直接蹴り込んだ岩田を見るまでもなく、正確なキッカー(左からは富田や真柄)と長身選手が揃うこのチームにとってセットプレーは大きな武器。もちろん180~190センチ級の選手を揃えながら一向にセットプレーの精度が向上しない某チームのような例もあるので長身選手がいれば必ずしも優位というわけではないが、これはチームとしてもストロングポイントとしていかなければならないところだろう。今後全国大会に出場し接戦となった時にはこれは大きな武器になるからだ。 ![]()
今シーズンの開幕前に名古屋がACLでベスト4まで勝ち上がるなど正直予想だにしていなかった。もちろん日本では研究され尽くしたスタイルも初の手合わせとなる海外チームに対しては有効に機能する可能性は大いにあり、その意味では昨シーズンのJリーグで見せたのと同じような快進撃が今年はアジアに舞台を移して展開されても何ら不思議ではなかったわけだが、これまでの名古屋というチーム(とそこでプレーする選手達)の悪しき伝統を考えれば、長距離の移動や過密日程を克服しその上でなお結果を残すというタフなタスクに対して名古屋の選手達が耐え得るのかどうか懐疑的にならざるを得なかったからだ。そう考えると、「ここまで来たら優勝を!」と望んでしまうのは仕方ないことだが、初出場にして日本勢唯一のベスト4に進出したことは誇るべき戦績であったと言えるだろう。 ただこの試合に関して言えば、その内容はとても褒められるようなものではなかった。パスを走らせるためというよりはアルイテハドの選手達の足を止めるためにまるでゲリラ豪雨にでも遭ったかのように水浸しにされたピッチといい、終始名古屋寄りの笛を吹いていた主審といい、名古屋がこの試合で得ていたアドバンテージは決して少なくはなかったが、それでもなお勝てないのだから、名古屋とアルイテハドの間に横たわる力の差は決して小さくはないということなのだろう。ベンゲル風に言うなら、名古屋とアルイテハドの間には100年経っても埋められない溝が存在していたといったところか。 最低でも4点を奪わなければ決勝に進めない名古屋は攻撃的な選手を並べた布陣でこの試合に臨んできた。かなり思い切った策ではあるが先手必勝でこれぐらいのことをしない限りこの逆境を乗り越える術はないとの判断だろう。そして試合に中ではケネディと巻というストロングヘッダーを並べた前線に対してダイレクトにロングボールを放り込むのではなく、細かくパスをつないでサイドへと展開しクロスボールから2トップの高さを生かしてゴールを陥れる戦術を徹底していた。前半の名古屋は時としてじれったく感じるほどタテにボールを入れず横にボールを動かすことが多かったが、最終ラインを中心に守備ではマークが緩いアルイテハドの特徴を考えればこれは至極もっともな作戦だった。 しかし名古屋はそれぞれに真っ当な選手起用と戦術の噛み合わせがどうにも良くなかった。SBに小川を回すのはこのところ攻撃的布陣にシフトする際の定番になりつつあり、実際に相手の左サイドにスペースが出来ていた日曜日の磐田戦でもそこが狙いどころと見るや代理監督のボスコは途中交代で右SBに小川を投入し得点に結びつけている。しかしこの試合のようにサイドからのクロスボールをケネディと巻の頭に合わせる戦術であるならSBの小川は明らかにミスキャストだ。よりによって名古屋のアタッカーの中ではクロスが下手な部類に入る小川をSBに起用する道理はない。そして小川自身まじめな性格が災いしてか、SBという「後ろ」がいないポジションに加えて三都主とブルザノビッチのWボランチというとてもカバーが期待できそうもない状況では思い切ったオーバーラップや1対1の場面でもドリブルの仕掛けが出来ていない印象だった。おまけにその前にいるのがフル代表でいうところの中村俊輔のようなことをしている玉田では右サイドは機能不全もいいところ。こうなったらサイドアタック(クロスボール)は左サイドに期待するしかなかった。 そんなわけでこの試合での名古屋が小川を右SBで起用したにもかかわらず右サイドで数的優位を作れず攻撃に連動性や厚みを持たせられなかったのはある意味必然だったわけだが、もしこうした戦い方を選択するのであればベンチにうってつけの人材が体力を持て余していたのだからもったいない話だ。そのうってつけの人材とは中村直志だ。中村のクロスボールはこのチームのアタッカーの中でも屈指の質を誇っているし、このところリーグ戦を(出場停止で)休んでいるために体力の消耗も少ない。おまけに周りと上手く絡みながら攻撃するタイプでもないので、玉田などと絡めなくてもその特徴が失われることはない。こういう場面で中村を起用せずしてどこで使うというのか。 そしてサイドからの仕掛けを志向するのであればボランチにブルザノビッチというのも微妙な選択だ。確かに4点のビハインドを追いかける上でブルザノビッチの持つ攻撃力(特に前へという推進力)は捨て難いが、視野の狭いブルザノビッチよりもボールを散らせるタイプの方が結果的に名古屋の攻撃力は高まったのではないだろうか。どうしてもブルザノビッチを使うならやはり巻を外すしかない。ケネディと巻でマークを分散させるという考え方もあるが、ケネディに引き付けその裏を狙うという考え方もある。準々決勝(川崎戦)でのマギヌンや準決勝・1stレグでの中村がその好例だ。この試合ではコンビネーションこそ未完成ながら左サイドを中心として精力的にサイドのサポートにも顔を出していたブルザノビッチだったが、もっとゴールに近い位置でプレーさせたかったところだ。 失点シーンでは攻撃から守備への切り替えの遅さに唖然とさせられた。二人三人とボックスになだれ込んでくるアルイテハドに対して名古屋の選手達は完全に置いて行かれてしまっている。連戦が続いていることや攻撃的な選手を並べていることなどは言い訳にならない。こんな状態では相手がアルイテハドでなくホンダロックであったとしても失点を防ぎ切ることは難しいだろう。磐田戦の前にボスコ・コーチが選手達に語ったというGK長谷川に対するサポートはどこへ行ってしまったのだろうか。 ほとんどが東アジアで消化されたグループリーグから灼熱のジェッダを経てホームの瑞穂で終焉を迎えた今シーズンの名古屋の挑戦で感じたのは、初挑戦でいきなりやすやすと優勝出来るほど甘くはないという現実と、次に名古屋がこの舞台(優勝が見える位置)に戻って来る時に一体この中で何人の選手が残っているのだろうかということ。外国籍選手とキャリアのピークを迎えたり峠を越えた選手が多い名古屋では小川と阿部が残っているかどうか。吉田はおそらく海外に行ってしまっているだろう。そんな意味でもピクシーが最後に切った交代のカードが吉村と中村だったことは残念だった。チームのキャッチフレーズにもある通り最後まで諦めない姿勢を見せることも大事だが、このまたとない機会に若い選手に経験を積ませることもまた未来を考えれば大切なことだったはずだ。そんな意味でも名古屋はいつの日か再び訪れるであろうリベンジの機会に備えてクラブ全体でこの経験を伝えていかなければならない。
突然ピッチにボフッという乾いた音が響き、そちらに目を向けるとゴールに向かって飛んできたボールがワンバウンドしてゴールの天井に突き刺さるように飛び込んだ。沸き上がるメインスタンドに向かって満足そうに両手を挙げて応えるピクシーを見て、俺はどうやらその“シュート”を決めたのがピクシーだったということを悟ったが、この“プレー”に対して松田のご注進を受けた主審はピクシーに退場を命じてしまう。バックチャージを受けたはずのマギヌンが松田の安い挑発に乗って相手と一緒にイエローカードをもらったシーンといい、百戦錬磨を誇る横浜主力選手の審判対応が上手いと言えばそれまでだが、この試合を捌いた主審(廣瀬格)に対する俺の不信感が決定的になった瞬間だった。伏線は名古屋が後半に横浜ゴール前で迎えたFKのシーンにある。キッカーの三都主が再三に渡って壁の近さをアピールしているにも関わらず廣瀬主審は遠くから「続けろ」の一点張り。結局三都主が蹴った壁越しのFKはゴール前で落ち切らずにバーの上を通過した。このシーンをAWAY側バックスタンドから観ていると良く分かったのだが、一度は自分の足で測ったところまで横浜の壁を下げさせようと試みた廣瀬主審だったが、壁を作った横浜の選手達がそれを無視していると、あろうことか廣瀬主審は壁をそのまま放置してその場を離れてしまった。弱気にも程があるし壁の距離は明らかに近い。まがりなりにも日本のトップリーグの試合を捌くレフェリーがあんな草サッカーでもなかなかお目に描かれないような状態でプレーを続行させて恥ずかしくないのだろうか。ピクシーへの退場宣告でレフェリーとしての威厳を示したつもりかもしれないが、この有り様ではそれどころではない。 試合は名古屋が負けるべくして負けた試合だった。水曜日にAWAY(サウジアラビア)でのACLを控える名古屋は小川と代表戦から帰って来たばかりのケネディを温存。巻とブルザノビッチで2トップを組ませるというかなり思い切った策を打ち出して来た。捨てゲームとまでは言わないが勝ち点を拾えればラッキーぐらいな感覚なのだろう。しかし横浜は日本代表・中沢を中心としたDFラインに加えWボランチに松田と河合を起用したストッパー祭りで守備ブロックを作っており、これを突き破るには巻とブルザノビッチの2トップではどうにも分が悪い。ロングボールの競り合いにおける巻の健闘は正直予想以上だったが、それ以上のこと(ただでさえ高くて強い選手が揃っている横浜のマーク(意識)を二人、三人と引き付けること)は事実上不可能。中沢であれ栗原であれよっぽどなことがない限り1対1でも高さで完全にやられることはないので、余った選手は2トップの片割れであるブルザノビッチのマークに集中出来る。ブルザノビッチは基本的にあまり動かないのでこうなるとモロに横浜のマークにつかまってしまい仕事が出来ない。中盤に下がろうにもそこには松田や河合がいるという状態だ。 そんな展開を俺はこの試合右SHで先発起用されていた杉本をトップで使って走力で勝負させた方が横浜DFとしては嫌だろうなと思いながら観ていた。かつてフェルフォーセンがガチガチの4-4-2の布陣を敷いてここ日産スタジアムで横浜に完勝した時のアレだ。巻が予想以上に(当時のヨンセン並には)中沢と競れていたことを考えればこの戦術は決してない話ではない。逆に言えば、このままでは名古屋はせっかく後ろでボールを奪って攻め込んでもフィニッシュに辿り着けないままボールを奪い返され、再び後ろは守備に奔走することになるという悪循環が止まらない。これでは後ろの選手達の疲弊は時間の問題だった。 そして吉田の鮮やかなゴールで先制するも、バヤリッツァの負傷と増川のインフルエンザでこの試合CBに入った竹内が定期的にやらかすマーカーを見失って相手に前に入られるというミス(去年で言えば東京V戦(河野)や天皇杯・G大阪戦(中澤))で失点し1-1の同点のまま後半を迎えた名古屋は、後半頭からブルザノビッチに代えて小川を投入し、巻と杉本の2トップが図らずも実現する。これは戦術的な意図と言うよりも単にブルザノビッチの負傷によるものだと思われるが、名古屋がこの試合で勝ち点3を取ろうと思ったらこのフォーメーションで戦っている時間帯しかチャンスがなかった。 しかし最後のところでアイデアが足りず名古屋は横浜ディフェンスを崩し切れない。そしておそらくACLを想定したローテーションでマギヌンが下がってケネディが投入されると名古屋は実質ノーチャンスだった。確かにケネディの高さと決定力は脅威だが、これで横浜は再びDFラインの前だけに注意を払えばよく、これまた高さが自慢のWボランチと挟み込むように守ればいい。そしてそんなケネディに対して最も質の高いボールを供給出来るマギヌンがいなくなってしまってはその脅威は半減だ。そうでなくてもそこから訪れるであろうオープンな時間帯で最終ラインと前線のリンクマンとして機能するマギヌンがいなくなってしまうのは名古屋にとって大きな痛手だった。 さらにお約束で杉本が足を攣って同じポジションの津田に交代すると俺の注目は名古屋の守備陣が試合終了まで持ちこたえられるかどうかの一点に絞られた。横浜の高く堅固なディフェンスを崩すほどのアイデアが急に湧き出て来るとは思えないことを考えれば、攻撃的な選手のみで交代枠を使い切った今となっては、前半から飛ばしていたツケが後ろの選手達に回るのもまた目に見えていた。実際攻撃がアタッキングサードにおいて致命的とも言えるアイデア不足に陥っている中、守備陣はGK広野のビッグセーブ連発でなんとか横浜の猛攻を凌いでいるような状態だった。そしてロスタイムの悲劇は三たび訪れる。こんなゴールをかつて磐田戦で成岡に決められた記憶があるが、もはやこれは戦術的な問題ではない。 そんな名古屋において目立っていたのはやはりアジアMVP候補の吉田麻也。技ありの先制点もさることながら、DFでも持ち味であるハイボールの競り合いだけでなく、1対1でもスピードのある坂田に仕事をさせなかった。前回瑞穂で対戦した時にはこの坂田にぶっちぎられたわけだが、同じ相手に二度やられるわけにはいかないという意地だろうか。ここのことろはつなぎも安定しているだけでなく時々決定的なパスを出すこともあるし、その眼はさらなる高いステージを目指しているような気がしてならない。一年目の時はセットプレーでも中沢に子供扱いされていたが、今やそれとも互角以上に渡り合っている。ユースの時に発していたような絶対的な存在感をこのレベルでも遂に発し始めた感じだ。この試合を視察した日本代表・岡田監督の目に吉田はどう映っただろうか。 ![]()
名古屋と横浜の試合が19:00キックオフなので昼間に市原で全社一回戦に出場する中田健太郎(松本山雅)と角拓哉(FC岐阜SECONDS)を観るかそれとも西川口で関東大学リーグを観るかで迷った挙句、西川口を選択。決め手は来シーズンからの名古屋入団が内定した中央大学の新井を観てみたかったのと、明治×駒澤の試合では久保×酒井という名古屋ユース時代のライバル対決が観られること。俺が中央大の新井を観たのはおそらく今年1月のインカレ決勝だけで、その時にはどちらかと言えばFC岐阜に4人の選手を送り込む筑波に目が行っており、ロングボールの競り合いで筑波の西川をことごとく撃墜していたのが今思えば新井だった。久保と酒井の対決が関東大学リーグに舞台を移して実現するのも感慨深い。ともに外部からのスカウトによって名古屋U-18に入団した二人は、三年時に吉田、新川、福島、長谷川等とともにクラブ史上初となる高円宮杯準優勝を成し遂げる。入団当初のポジションは二人ともFWで、前評判は年代別代表にも選ばれていた久保の方が高かったが、二年夏のクラ選では先発で起用されていたのは酒井だった。しかし二年時の高円宮杯の途中から久保がレギュラーを奪取しそのまま定着。三年になると酒井はSBへとコンバートされ、大学入学後の現在も関東大学リーグの強豪・駒澤大で右SBとして堂々レギュラーを張るに至っている。 競技場に到着してショックだったのは第一試合で早稲田と当たる中央大のスタメンに新井の名前がなかったこと。今日西川口まで来た目的の半分がこれで潰えたわけだが、ここはひとつ気を取り直して試合観戦。昨冬のインカレ王者中央大には同じく昨冬に選手権を沸かせた前橋育英高出身の六平、早稲田にはプロ入りも噂される松本怜といった個人的にも好きなタレントがいる。よくよく考えてみれば、俺が前回この競技場に来たのは4年前の高円宮杯で、当時まだ高校二年生だった久保や酒井も出場していたが、その第二試合で高校生離れした超速ドリブルから切れ込んでの左足弾丸シュートを決めていたのが当時青森山田高校三年だった松本怜だった。 第一試合は30~40m級のミドルパス(サイドチェンジ)を寸分の狂いもなく次々と受け手の足元にピタッと収めるナンバー10・村田を中心とした中央大の組織的なサッカーの前に早稲田が全くサッカーをさせてもらえなかった。そして中央大は前線では安、最終ラインでは(新井がいなくても)中京大中京出身の大岩が完全に制空権を掌握し早稲田に突け入る隙を与えない。 というよりも早稲田は大丈夫だろうか。タレントはいるはずなのに全く有効活用されている雰囲気はないし、大学自体のブランド力で良い選手はいくらでも集まって来るだろうが、これがプロのクラブだとしたら敢えてこのクラブに入りたいという選手は少ないだろう。やっているサッカーの内容、そして自分がそこで成長出来るのかどうかを考えると大きな疑問符が付くのは間違いない。 個人的な注目選手である六平と松本怜だが、まず中央大で4-4-2の左SHに入った六平は技術やセンスでは良いものを感じさせるものの、まだ周りに対して遠慮があるのかプレーがちょっと消極的で中途半端。消えている時間も多く、これは主に精神面の問題だと思うが、六平がバンバン点を獲り始めたらその時こそが彼にとって真の覚醒の時であり、その時にはプロも放ってはおかないだろう。今年4年生になった松本怜はSHの人材を欠いている名古屋にも是非その獲得レースに手を挙げてもらいたい選手。スピードという明らかな特徴があるのもピクシー好みだと思う。しかし利き足ではない左足ではしばしば客席をシーンとさせるような戦慄のシュートをゴールに叩き込む半面、パワーが有り余っているとしか思えない右足では逆の意味で客席を凍りつかせるような宇宙開発を連発するところは以前と変わっていない。この試合では2トップの一角に入っていたが、守備の負担が軽減されて伸び伸び出来るのかと思いきや、逆にチームが攻撃を(というかゲーム自体を)上手くオーガナイズ出来ない中でFW(エースストライカー)の彼への負担が大きくなり、有り得ないような(とても有効とは思えない)位置でドリブルを始めたりなど彼の持ち味をゲームの中でチームのために生かし切れていないような感じだった。名古屋に来れば杉本に取って代わる人材としてその持ち味をもっと生かせるような気もするが、スーパーだけど怪我がちな石川直宏のスペアとしてFC東京あたりも放っておかないだろう。 続く第二試合はいよいよ明治と駒澤の対戦。こちらはともに三年生になった久保も酒井も無事先発出場。明治は一週間前の天皇杯で湘南を下して三回戦進出しているが、特に前半はプロ相手に自分達のスタイルであるパスサッカーで圧倒していた。当然この試合もそんな明治が主導権を握って進めるのかと思いきや、予想に反して駒澤のお家芸であるキック&ラッシュとハイプレッシャーの前に自分達のサッカーがなかなかさせてもらえない。(向かい風で高いボールが戻されるという部分はあったにせよ)頼みの久保もハイボールの競り合いでは駒澤の誇る中山と伊藤という2枚の壁(CB)の前に完封されてしまっていた。 どうにも上手く行かない明治は後半のキックオフに合わせてトップの山村に代えて前線で身体を張れる山本を投入したことで少しづつパスが回り始め、さらに後半途中から三田をトップ下に置いて久保を右サイドに回した4-2-3-1のような形にすると、右サイド深い位置から久保がタテに入れたボールを受けた三田がドリブルで左に回り込みながらGKの頭越しにループシュートを決め先制に成功する。このゴラッソで気が楽になったのかこれを境に明治は完全に自分達のスタイルを取り戻した。 しかしその後駒澤も徹底したキック&ラッシュで対抗しロングボール一本から三島が落としたところを途中出場の那倉が蹴り込んで同点に追い付くことに成功する。明治は先発のCBが負傷で交代しさらに交代で入った選手も負傷で交代を余儀なくされるという不運もあったが、駒澤のダイレクトプレーの前には終始劣勢だったこともあり、これだけ完璧なゴールを決められるともうあきらめるしかない。 こうなると意地と意地のぶつかり合い。パスサッカーとキック&ラッシュというイデオロギーを懸けた戦いのようでもある。そして両チームともに総力戦で死力を尽くした試合は1-1で終了。素晴らしい試合を観たすがすがしさを抱きながら俺は一路新横浜へと向かったのだった。 ![]() |
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