Grampus Diary from TOKYO
by tknr0326g8
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
最新の記事
以前の記事
天皇杯 決勝 G大阪×名古屋 @国立競技場
 実に10年ぶりとなる名古屋の天皇杯決勝進出。開幕から15年以上の月日が経過しているというのに未だリーグ優勝を成し遂げていない名古屋にとって唯一獲得したことがあるタイトルがこの天皇杯ということもあり、またかつてアーセン・ベンゲルやジョアン・カルロスが作り上げたドリームチームが元旦の国立競技場で鮮烈なイメージを残したこともあり、名古屋にとって天皇杯決勝は勝つものという固定観念が出来上がっているのは否定できないところ。一ファンの俺ですらそんな状態なのだから、選手として二度の天皇杯制覇を経験した監督のピクシーがそれに似たような楽観論に囚われていても何ら不思議ではなく、それが結果的には両チームの現時点での実力差をそのまま反映したようなスコア(1-4)になって顕在化してしまったのがこの試合だった。

 試合全体を通して最も顕著であり象徴的だったのは、名古屋には遠藤も明神もいなかったということ。中盤の底で攻撃のタクトを振るいチャンスと見るや自ら仕掛けることで自身の2ゴールを含め後半に試合を決めた3ゴールすべてに絡んだ遠藤。ケネディに対して入ってくるタテパスのコースを切って後半はケネディに仕事をさせなかった明神。もちろんその二人を含むG大阪の中盤のクオリティは一朝一夕で作られたものではないが、彼らに匹敵する存在が名古屋にはいなかった。前半に同点ゴールを決めた中村やアンカーの位置でこのところ安定したパフォーマンスを見せている吉村は確かにピクシーの求めることは実践出来ていたかもしれないが、彼等のプレーが試合の趨勢を決めるようなものでなかったことは、勝ち越しを許した後にピクシーが切り札(巻と三都主)の投入と引き換えに彼等を下げてしまったことを見ても明らかだ。そしてチームの中では期待の生え抜きで将来そんな(遠藤のような)存在になってくれるのではないかと期待されている10番・小川に至っては、4‐1‐4‐1でいつものアウトサイドではなくインサイドハーフとして起用されたこの試合で全くその期待に応えられず、その目に余るパフォーマンスに見兼ねたピクシーが前半25分頃にはアウトサイドにいたマギヌンとのポジションチェンジを指示。しかし本来のアウトサイドに持ち場を移してからも主にプレーしていた左サイドではG大阪の元日本代表右SB・加地亮に完封されて結局良いところのないまま後半途中にブルザノビッチとの交代を命じられてしまった。玉田とともにピクシーから絶大な信頼を得ている小川がそのパフォーマンスを理由にこうして試合途中で交代させられてしまうのは本当に珍しい。

 今年のACLで日本勢として唯一準決勝進出を果たした名古屋がCWCに出場していた場合を想定して組まれたというこの天皇杯のスケジュールは、準々決勝から準決勝までおよそ半月の間隔が開き、準決勝から決勝までは中2日という変則スケジュール。基本的にそうした中断期間におけるチーム状態の調整が上手くない名古屋は29日の準決勝・清水戦では久々の実戦ということもあってか相手よりも先に足が止まり始めていた印象だったし、その清水戦で延長も含めれば120分を戦い抜いて中二日で迎えるこの決勝戦をどういった状態で迎えるのかはかねてからの不安要素ではあった。名古屋にとって楽観的に考えるならば、こういうトーナメントでは得てして苦労して勝ち上がってきたチームの方がすんなり勝ち上がってきたチームよりも優位だったりするので、三日前にお互いに久々の公式戦という中、清水との文字通りの死闘を勝ち抜いてきた名古屋と仙台を一蹴してきたG大阪とであれば名古屋の方が優勢であるという見方もできる。一方でG大阪にとってのアドバンテージは、この決勝戦に向けて、つい三日前に同じ会場を使って調整を兼ねたリハーサルを行なえていたということ。名古屋に勝ち目があるとしたら、三日前の試合に勝った勢いをそのまま相手にぶつけられる試合序盤に先制点を挙げてそのまま相手を呑み込むしかない。拮抗したまま長期戦にもつれ込めばフィジカル的にも名古屋の不利は免れないだろうし、試合巧者のG大阪が優位なのは目に見えている。
 そんな状況下でピクシーがこの試合に向けて採った策はどちらかと言えばコンディション重視で、三日前の清水戦の負担を軽減すべくターンオーバーを用いた選手起用だった。常々「ひとつのポジションに三人の選手(選択肢)が欲しい」と語っているピクシーにとって大きな故障者がいない今の状況は願ってもないシチュエーション。バヤリッツァ、増川、吉田の三人を順番に回すCB、マギヌンとブルザノビッチを交互に使う攻撃的な中盤、三都主、中村、吉村の三人が(その用途にも応じて)均等に起用されるセンターハーフとかなり理想的な状態で選手を使い廻すことができる。GKの楢﨑はもちろんのことケネディや玉田、小川、両SBといったところは不動ながら、これらのローテーションによって名古屋(ピクシー)はこの決勝戦に臨もうというわけだ。
 だが、完全な結果論で言えば、これは必ずしも上手くはいかなかった。上でも書いたような変則日程に出場停止なども絡み、名古屋のスタメンには約一か月ぶりの公式戦となる選手や同じく半月ぶりの出場となる選手が混在していた。彼らがこの決勝の舞台で最高のパフォーマンスを発揮するには少し準備不足だったかもしれない。そして名古屋が勢いよりもコンディションを重視したということは、それはすなわち(チームの成熟度も含めた)力では一枚も二枚も上手のG大阪に対して真っ向勝負を挑むということ。確かに今季リーグ戦で二戦二勝と相性の良い相手ではあるが、そのいずれもがほとんど神懸かり的な結末であり、単純に互いの力だけを比較すればG大阪の方に分があるのは間違いない。G大阪が屈辱的ともいえるリーグ戦の連敗のリベンジに燃えているであろうことを考えてもこれは得策とは言えなかった。

 試合に目を向ければ名古屋がリーグ戦終盤から採用して良い感触を維持し続けていた4‐1‐4‐1がここまで機能不全に陥ったのは初めてだったのではないだろうか。逆に言えばG大阪は名古屋の4‐1‐4‐1をよく研究していたし、試合の中でそれを見極め修正を施していた。攻守両面において機能していたはずの名古屋の新フォーメーションは、攻撃面ではその主要回路を寸断されるとともに、名古屋のフィニッシュに対して明確なイメージを持っていると思われるG大阪が最後のところで落ち着いた対応を見せるので、時間の経過とともにその攻撃からなかなかなかなかゴールに匂いが伝わって来なくなった。そして守備面においても、G大阪のストロングポイントであるパス回しがこれまであまり詳らかにされることのなかった名古屋のウィークポイントと見事なまでに合致してしまった。
 攻撃面では二人の左利きのプレーヤーを両ウイングに配置したり、全く機能しなかった小川のインサイドなど選手起用の面での失敗はあったにせよ、いくつかの欠点がこの試合で白日の下に晒されることになる。その代表的な例が玉田で、新システムでかねてからその機能性が微妙だったウイング・玉田は、微妙な位置でボールを受けては目的のハッキリしないドリブルでの仕掛けによって自ら攻撃の芽を摘んでいた。もちろんこれは玉田だけの責任ではなく、チームとしてのサポートも含めた機能性も問題でもある。例えばケネディにクサビのボールが入る度に誰もサポートに行かずその周りにはG大阪の選手たちが三人掛かりくらいでたかっていたのはその好例だ。
 守備面では新システムへの移行以後、名古屋のプレスがこれほどハマらず好き放題パスを回された試合はあっただろうか。FC東京時代から「名古屋キラー」であるルーカスに決められた先制ゴールのシーンで鮮やかなパス回しによってフィニッシュまで持ち込まれていたのをはじめ、1ボランチ(吉村)の両脇にたっぷりとスペースがある名古屋のバイタルエリアにビシビシとクサビのボールを入れてくるG大阪の攻撃に対して、名古屋は全くそれを捉まえ切れず、遅れてそこに寄せて行くと今度は後方に待ち構える遠藤にボールを戻されてそこから再びサイドのスペースなどに展開されてしまう。こうなると遠藤の掌の中でほとんどされるがままの状態だ。

 ただこの試合で名古屋がノーチャンスだったと言えばそんなこともない。名古屋の様子を伺っていた風でもあったG大阪の前半の戦い方は幸先良く先制したこともあってか、名古屋のミスを待つような消極的な戦い方で、前半終了間際に中村のゴールによって同点に追い付いた名古屋がその勢いのまま逆転ゴールを挙げていれば試合はどうなっていたか分からないし、実際後半立ち上がり何分かまではそのチャンスも十分にあった。もっともそのチャンスをもっと盤石なものとして生かすためには、ケネディに対するサポートや両サイドの機能性に更なる工夫が必要で、今シーズン終盤から天皇杯にかけて手応えを掴んできたこの4‐1‐4‐1も相手からの研究が進む来シーズンに向けては上積みがなければ同じような結果は付いてこないという良いレッスンになったかもしれない。

 Never give up!を掲げるチームにあって、最後には集中力も切れて1-4という凄惨なスコアになったこの試合。名古屋にとっては10年ぶりの天皇杯制覇と来シーズンのACL出場権獲得という二つのものを同時に失う代償の大きなものになったが、もし同じブロックに鹿島や川崎やこのG大阪がいたら名古屋はここまで勝ち上がれなかったかもしれない。その意味ではこの敗戦は妥当なものなのだろう。次は運に頼らなくてもタイトルを獲得し自力でACLに出場できるようなチームに仕上げて再びチャレンジを試みて欲しい。実際過去二回この天皇杯を獲得したチームはその過程でどんなチームと当たっても頂点まで昇り詰められるだろうという確信を感じさせるチームだったし、今回のチームは残念ながらそこまでのものがなかったのも事実だ。

 最後にこの日を最後に(ジュニアユースから含めれば)9年間プレーした名古屋を去りオランダでプレーすることになる吉田麻也。俺が初めて見たのはユース(U-18)に入ってからだが、ここまでとは言わなくても必ずチームの中心的な存在になると当時から確信されるものを持っていた。その才能が開花(ブレーク)したのが2年生の夏頃でちょうどU-18日本代表に選ばれた頃だ。3年時にはアンカーで絶対的な存在としてプレーしているのを見ていたので、むしろ一年目にセットプレーで中澤に弾き飛ばされたり、ジュニーニョはともかくとしてシジクレイなどにも緩急を使ったドリブルでぶっちぎられたりしていた姿が意外だったぐらいだが、その後は滑り込みで北京五輪代表に選出されるなど選ばれた選手でしか持ち得ない運も持っているのだろう。そして俺の知る限り今年の秋ぐらいから明らかに二度目のブレークスルーを果たした吉田の目には海外移籍が視野に入っていたに違いない。
 名古屋のユニフォームを着てピッチに立つ姿が見られなくなるのには一抹の寂しさはあるが、海外に挑戦するなら若いうちの方がいい。入れ替わりで名古屋にやって来る闘莉王がこの冬の海外移籍を回避したこともあり、日本の本格的なCBがヨーロッパに挑戦するのは(中田浩二などの微妙な例を除けば)これが初めてなので、どこまで出来るか単純に楽しみでもあるし、現時点で岡田監督の持つリストのかなり後ろの方に名を連ねている吉田が北京同様に南アフリカに滑り込むにはこれしか手はないという意味でもその成功を祈りたい。ただ名古屋ではスタンドから若干の悲鳴が上がる程度で笑って許してもらえた単純なフィードミスにしても、海外でそれを連発していては飛んでくるのは野次やブーイングであることなど、その年俸に見合ったより一層厳しい環境であることは肝に銘じておかなければならない。
b0036243_1632218.jpg

[PR]
by tknr0326g8 | 2010-01-01 23:59 | Game Review
<< トレーニングマッチ 湘南ユース... 天皇杯 準決勝 名古屋×清水 ... >>