Grampus Diary from TOKYO
by tknr0326g8
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天皇杯4回戦 対鹿島 1-2 (得点:ヨンセン)@カシマスタジアム
 まずは負け惜しみから。

 「SPIRIT OF ZICO」

 バックスタンド最前列の前の壁に掲げられていた弾幕だ。リーグ戦と違いピッチ脇に看板がないから余計に目立つ。「王者」と呼ばれた頃の風格のようなものが消え失せようが、観客が目に見えて減少しようが、そんなことは全く関係なく、クラブの文化と呼べるまでに昇華したものが鹿島にはある。名古屋サポからしてみれば18連敗中というカシマスタジアムではことのほかそれを強く体感するだろう。
 1-2とリードされて迎えた後半、濡れたピッチの上を泳ぐように滑る鹿島の選手達は文字通り水を得た魚のようだった。ちょっとした接触プレー(ノーファール)でも大袈裟に痛がって見せる演技やすぐに複数の選手で審判を取り囲む圧力団体さながらのプレッシャーといった行為の完成度はもはや伝統芸能の域。後半立ち上がりからさっそくその(名古屋の選手達の比ではない)意思統一レベルの高さを見せ付ける彼等は、前半にイエローカードを一枚もらっているヨンセンに二人掛かりで絡んで行ってもつれて倒れ片方の選手(野沢)が顔を押さえて倒れ込む。この明らかにヨンセンをピッチから追い出すことを意図した謀略はレフェリーに見抜かれ失敗したが、それでも76分にはカウンターから抜け出した田代がスピラールのチャージを受けて派手にすっ転んで見事スピラール排除に成功したのだった。
 スピラールが退場し数的優位な立場になってからも、このお家芸は収まるどころかますます加速。例えば本山が名古屋の選手との競り合いで派手に悶絶して倒れた場面。当然のごとく主審は笛を吹かず名古屋の選手たちも無視して攻撃を続けたわけだが、自陣ゴール前でこの攻撃を食い止めた鹿島が大きく前線に蹴り出したボールはA・ミネイロと大森の間ぐらいに落ちた。本山は相変わらずピッチ上に寝転がって身をよじっている。ここは鹿島が一旦切るのだろうと俺は思った。大森もおそらくそう思ったに違いない。大森の出足が一瞬遅れ、Aミネイロが一足先にこのボールへと追い付いた。そして本山の方を振り返って一瞥したAミネイロは当然のようにプレーを続行した。シュートは枠を逸れたがスタジアムから悲鳴が上がるほどの決定的なシーンだった。

 アーセン・ベンゲルとカルロス・ケイロスのもとでコーチを務めていた田中孝司が97年にチームの監督に就任するにあたり、地元紙のインタビューの中で「強いチームを作っていきたいが、鹿島のように勝つためなら何をやってもいいという風にはしたくない」と語っていたことがあり、ある意味この瞬間が田中孝司にとってのクライマックだったのかもしれないと今から振り返れば思うが、俺はこの意見に賛同したい。そしてそれが正しいことを証明していかなくてはならない。個人的には鹿島との試合はチームとしてのイデオロギーを賭けた戦いだとも思っている。


 翻って名古屋。

 結果的に今シーズン最後の試合となってしまった名古屋だが内容を見れば一年という歳月を掛けて徐々に浸透しつつあるスタイルを(少なくともその道しるべぐらいは)示すことが出来た試合だったと言えるだろう。ヨンセンへの徹底マークが予想される名古屋は、何はともあれまずはヨンセンに当ててそこから展開と言ういつもの形に終始することなく、中盤から後ろでボールを回しながらサイドを使って攻めるという形を前半からよく作れていた。特に本田不在の左サイドで渡邊が本田とはまた違った持ち味であるスピードとテクニックを駆使して再三突破からのクロスを試みるシーンが目立った。スタミナ面に不安があり後半になるとよく足を攣る渡邊だけに、それは観ているこちらが「これで本当に後半最後まで持つだろうか」と心配になってしまう程だったが、絶好のアピールチャンスをモノにしたいというモチベーションがそれを上回ったのだろう。最後まで足が攣ることもなく積極的なプレー姿勢は同点ゴールのアシストという目に見える形で結実した。

 もう一人目立っていたのが金正友。いつも山口Kとともに三人で中盤を形成している藤田の不在で若干の不安もあったが、いつものように前線への飛び出しをこなしながら、しっかりと中盤でボールを動かし、時に見せるダイナミックなサイドチェンジには来シーズンの更なるブレークを予感させるものがあった。一説には「ブラックリスト」なるものが存在するとされる(そしてそのようなものが存在するなら間違いなく金正友はその一番上に名前が記されているであろう)Jの審判の判定の壁さえ乗り越えられれば、まだまだ伸び盛りの年齢だし来シーズンが楽しみだ。
 広島とのアウェーゲームの時だったか、スカパー解説の遠藤雅大も指摘していたが金正友はボールの受け方(トラップの仕方)が上手い。フェイントを入れるようにして相手の逆を取ってボールをコントロールし悠々と次のプレーへと移行する様は実にエレガント。特にこの鹿島戦のように中盤でのプレッシャーが厳しい試合で、それを山口Kと比べてもその差は歴然としている。

 一方ですでに試合前からシーズンが終了してしまっていたかのような選手たちもいた。ピッチが濡れていることもあり、名古屋は試合開始からキックやトラップのミスが続出。大森がコントロールをミスして相手に詰められる場面は一度や二度ではなかったし、一向に定まらない楢﨑のキックは試合終盤になるとヨンセンの怒りを誘っていた。(時々自陣ゴールライン際まで戻っての忠実なディフェンスをこなすことを除いて)結局シーズン終了までアウトサイドに自分の居場所を見つかられなかった中村はこの試合でも何も出来ないまま後半途中で藤田と交代した。タッチライン際の開いて足元でボールを受け、ファーサイドのヨンセンにアーリー気味のクロスボールをを放り込むか、ニアサイドのスペースにボールを送って玉田や杉本を流れさせるか(しかもその後そこに絡んで行かない)だけでは、中村の良さは半分も出ないし怖さもない。渡邊が見せるようなボールをもらうためのアクションや、本田が見せるようなボールをもらってからの仕掛けやアイデアといったものがないのでは、攻撃はいつまで経っても左偏重になってしまう。元来(少なくともピッチ上では)自己主張が強くない(ように見える)上真面目な選手だけに、もう少しチームとしての連動性が高まってこないとフィットするのは難しいかもしれない。だが果たしてその時に中村にポジションは残されているだろうか。それはあくまでアウトサイドだろうか。

 そして玉田。結論から言えば少々割高な感じはするが玉田はもうスーパーサブでいいんじゃないかと俺は思う。そもそもこの試合で玉田を先発起用することに俺は懐疑的だった。このメンバーなら中村を一列上げるなりして前線のアタッカーを構成し中盤に藤田を起用した方が安定した戦い方を出来るんじゃないかと。しかし負けたら終わりのトーナメントでフェルフォーセンはヨンセン、杉本と玉田を組ませることを選択した。玉田個人が持つ攻撃力はそれ自体で捨てがたいものがあるし、そしてまだ記憶に新しいホームでの浦和戦のようにこの3トップが相手(特にDF)に与える心理的なプレッシャーも少なくない。そこに賭けたのだろう。
 しかしいざ試合が始まってみればこのシステムの負の面が顕在化してしまった。それは守備面という話になるのだが、名古屋は前半からダイアモンドの形をした鹿島の中盤のマークを上手く掴むことが出来ない。特にダイヤモンドの頂点(トップ下)である本山が自由に動き回るのが厄介だったわけだが、鹿島の中盤が4人なら名古屋の中盤も4人、ゾーンで受け渡せば守れないわけではないはずだった。それなのになぜ名古屋は時に中盤で極端にフリーな選手を作っていたのか。それは前の3人(3トップ)が鹿島の4バックを抑止できなかったことにも起因していると俺は思う。そしてその中でひと際守備面での貢献が低かったのが玉田だった。試合序盤玉田は右サイドのトップにいた。しかし鹿島の左SBである新井場に守備で対応していたのは主に中村で、これで空いたファビオ・サントスが狙い済ましたミドルシュートをポストに直撃させたのもまさしくこうした時間帯だった。玉田が杉本とポジションを入れ替わって左サイドに移ると今度は隙を見て内田が怒涛のオーバーラップを仕掛けて来た。一気に名古屋のゴールライン際まで駆け上がった内田の折り返しに名古屋ディフェンスは脅かされた。それを離れた位置から見つめるだけの玉田。その能力とポテンシャルを考慮すれば玉田が戦力にならないということはないが、これなら相手も疲れてきて自分も得点を取ることだけに集中すればいいスーパーサブが玉田に一番向いている仕事なのではないかと思えてしまう。
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by tknr0326g8 | 2006-12-09 21:00 | Game Review
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