Grampus Diary from TOKYO
by tknr0326g8
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高円宮杯・準決勝 vs広島ユース @国立競技場
 名古屋ユースにとっては一年ぶりに帰って来た国立の舞台。優勝候補の呼び声高く圧倒的有利とささやかれる広島ユースとの試合は、歓喜あり涙ありのドラマチックな試合展開で、どちらかのチームに肩入れしているファンならずとも楽しめたのではないでしょうか。これが「サッカーの聖地」が持つある種神秘がかった力なのか、こんな劇的なシナリオはどんなに優れたライターでも書けないに違いない。

 アルベスが怪我から復帰した名古屋はベストメンバー。(国体の影響で?)中一週間空けたスケジュールは名古屋にとってはプラスに作用した。フォーメーションは西部を中盤のアンカーに据えた4-3-3。この大会、3-4-3と4-3-3(4-4-2)を併用する名古屋だが、この試合では広島の3トップ+トップ下の横竹(10)に対応する意味合いもあってか4バックを採用。

         アルベス
      磯村     太田

     西山       安藤
          西部

 中田   三宅   津田   三島

          鈴木規

 キックオフから押し込んできたのは下馬評で優位と伝えられる広島だった。プレーを構成する要素に心・技・体という三要素があるならば、広島のそれはいずれもがハイレベルだが、名古屋と比べて特に際立っていたのは「体」の部分。比較的シンプルにタテへとボールを入れて強力な3トップがパワフルな突破から勝負を仕掛ける広島の攻撃は、DFのラインコントロールがウィークポイントの名古屋にとっては難しい相手だったに違いない。特に開始から10分は、これまでの会場とは器の桁が二つ違う国立競技場ということもあってか、名古屋の選手たちの動きにもどことなく硬さが見られ、最終ラインでなんとか広島の攻撃を凌いでいた感じだった。試合開始からほどなく、広島の8番内田が自身のロングスローから跳ね返って来たボールを左足で叩いた強烈なシュートがGK鈴木規の指先をかすめ逆サイドのポストを直撃したシーンがあったが、もしあれが決まっていたら試合は一方的なペースになっていたかもしれない。

 時間の経過とともに少しづつ会場の雰囲気にも広島の攻撃にも慣れてきた名古屋は慌てずにしっかりとしたディフェンスが出来るようになってきた。相手にボールが渡ると後ろでは二列のラインでしっかりと守備ブロックを作り、前線もアルベス(もしくはカウンターで前に走り込んだ選手)ひとりを残してボールを追い掛ける。そしてタテに入って来たボールに対して積極的にインターセプトを狙う形。相手がハイボールを蹴って来れば対応するのはもちろん三宅。この試合でもその圧倒的な高さは、二回目ぐらいの競り合いで既に「またあいつか」的などよめきをメインスタンドで誘っていた。

 立ち上がり当初の広島の勢いは、名古屋が守備の形を整え始めたことで、ようやくかげりが見え始めたが、名古屋も攻撃(カウンター)にあまり人数を掛けないということもあってか、前半はなかなか広島のペナルティエリア内にまで到達できない時間帯が続いていた。そんな流れは、どちらかと言えば、より相手ゴールに近い位置でポイントを作り、個人の能力によって局面を切り開かんとする広島優勢の試合展開ではあったが、今大会これまでの名古屋の戦い方を観ていれば、これも実は名古屋のペースなのかもしれないとさえ思えてくる。

 名古屋で気になったのは左サイドでのディフェンス。両ウイングがワイドに開いた4-3-3のフォーメーションを敷く広島は、名古屋のサイドバックが攻撃に絡むと両ウイングが自陣まで戻って来て対応(守備)するが、一方アルベスをトップにその下で二人がサポートに付くような(太田がやや右に張る)形の名古屋の3トップは、相手SBの上がりに対して、右サイドでは太田がそのままスペースに入ってケアするものの、左サイドでは(もしボールを振られれば西山が対応に向かうのだが)対応が少し遅れがちだった。実際サイドチェンジから右SB小西のオーバーラップを許し、そのクロスに(ゴール前ひと山越えた所で)後ろから走り込んで来た横竹がドンピシャで合わせるというようなシーンも前半にはあった。

 時間の経過とともに徐々に名古屋が失地を挽回しDFラインでボールを回せるようになると、(ゲーム自体は膠着したが)名古屋イレブンは一層落ち着きを増していった。そして前半終了間際には三連続でCKを獲得し、その過程ではこぼれ球を拾った西山が惜しいシュートを放つなど見せ場を作ったりしてそのまま前半終了。

 立ち上がりを中心に劣勢だった前半で目立っていた選手はと言えば、膝に施されたテーピングがまだ痛々しい西部だろうか。基本的には横竹をマークしながらバイタルエリアのケアをするのが彼の役目なのだろうが、周りのプレーヤーとマークの受け渡しをしつつ、自分が空いていると凄まじい運動量でプレスに走り回っていた。そして、この広島との試合を迎えるに当たって俺が不安視していた要素のひとつが、実はこの西部が横竹を中心とした広島の中盤のプレッシャーに耐えられるかどうかということだったのだが、ゲームが落ち着きを取り戻した時間帯、西部は中盤でしっかりとボールを捌く仕事もこなすことが出来ていた。確かに感じられる大会を通じての成長の跡。

 後半開始に伴い名古屋はシステム変更。4-3-3から太田を右SHに下げ安藤を左に回した4-4-2へ。今大会定番のシステム変更ではあるが、やはり広島のサイドバックの上がりが気になったのだろうか。

       磯村  アルベス

 安藤   西部   西山   太田

 中田   三宅   津田   三島

          鈴木規

 そしてシステム変更を行った名古屋は後半良い感じで試合を進めることが出来ていた。広島の攻撃に慣れたこととフォーメーションを変えて守備の役割を明確にしたことが攻撃面でもプラスの効果をもたらしている様子の名古屋は、攻撃に移った時に掛ける人数も広島陣内に入ってプレーする時間も明らかに前半よりも増加している。先制点こそセットプレーから最も注意すべき横竹に許したものの、その後、目に見えて広島の選手達の足が止まりだし、全体が守りに入ったということもあって、名古屋の攻撃の勢いは増していった。

 後半に試合の流れを変えるポイントがあったとすれば、広島が27番の大﨑を後半途中で下げてくれたこと。広島のアタッカーはどの選手も能力が高いが、名古屋DFが特に手を焼いていたのがこのU-16日本代表にも名を連ねる1年生だった。右へ左へとポジションを変えながらボールを受けるや弾丸系のドリブルでゴールへと突き進む彼は、後半開始早々にもスルーパスからDFラインを抜け出してGKと1対1の場面を作り出していた。幸いにも彼が選択したループシュートはバーを大きく越えて行ったが、それは後半良い入り方をした名古屋に対しても十分な脅威を与えるものだった。太田が交代直前にもらったイエローカードも、小柄ながらパワーもある彼の鋭いターンからの突破を止めようとしてのものだったし、名古屋が太田に代えて岸を投入した時に、岸をそのまま右に入れるのではなく敢えて左サイドにいた安藤を右に持ってきたのには、その時間帯名古屋にとっての右サイドでプレーする機会が多かった彼を抑えようという意図があったのかと思えるぐらい。

 足の止まった広島に対して名古屋は波状攻撃を仕掛ける。カウンターから左サイドでボールを受けた岸がドリブルで持ち込んで放ったシュートが逆サイドのポストを叩いたり、左サイドからの折り返しに中央でアルベスが胸トラップからバイシクル気味に放ったふわりとしたシュートを広島GK原が身体をゴールマウスに入れながらギリギリのところでキャッチしたりと、ゴールへの距離は確実に縮まっている。

 名古屋攻勢のまま過ぎていく時間。ふと時計を見ると80分を過ぎていた。広島の先制点が遅かったということもあるが、この後半、時間が過ぎるのが恐ろしく早い。
 残り時間も僅かになったところでやおら躍動し始めたのは右サイド。三島が再三スピード溢れるオーバーラップで敵陣へと切り込めば、安藤もテクニカルにして精力的なプレーでこれに絡む。逆に後半の途中までは攻撃にも顔を出していた左サイドの中田健太郎はここへ来てややガス欠気味だ。こんな時に頼りになるのはいつも彼だったが、この試合では前半から広島3トップへの対応に忙殺されていたから無理もない。

 そして刻々と刻まれる時間の中、国立のビジョンがからタイム表示が消えロスタイムへと突入した時に右サイドの安藤と三島のコンビによってもたらされたCK。中田健太郎がボールをセットしている間に、そのひとつ前のCKでは上がるのを躊躇したGK鈴木規もゴール前まで上がって来た。そんな文字通りのラストプレーでドラマは生まれる。中田健太郎が蹴ったボールにややファーサイドで相手と競り合いながらポジションを取っていた三宅が頭ひとつ抜け出す高さで魂のヘッド。これが広島ゴールに突き刺さり同点。土壇場で試合は延長戦へともつれこんだのだった。

 延長戦に入ると試合は完全な名古屋ペース。広島はロスタイムに同点に負い付かれたという精神的なダメージに加え、肉体的にも後半途中から既に足が止まっていたような状態だったからそれも至極当然の流れだ。ゲームを支配する名古屋は、後半に続きサイドが基点となって広島陣内でパスをつなぎ攻撃を組み立てる。そして左サイドから中央の磯村へと渡ったボール、マークの緩い状態でこれを受けた磯村はそのまま大きくスペースが広がる(当然そこには選手(安藤)が走り込もうとしている)右サイドへと展開するかと思いきや咄嗟の機転でやや左側の前方にいたアルベスにスルーパス。これを受けたアルベスがDF二人に挟まれながらも前に持ち出してそのまま右足でゴールへと流し込みついに名古屋が逆転に成功した。

 まだ延長戦は前半の残りと後半を残すがこれで勝負が決まったと誰もが思った。今大会守りに入った時の名古屋の辛抱強いディフェンスが堅いことは証明済みだし、広島には精神的にも肉体的にも反撃する余力が残されているようには見えなかった。
 しかしドラマはこれだけでは終わらない。広島のキックオフで再開されたゲーム。後ろに戻されたボールを得点によってテンションの上がっているアルベスが勢いよく追っていく。その光景を見ながらまだ名古屋の勝利を信じて疑わない俺。というよりむしろ確信を深める俺。しかし一度下がったボールがアルベスのプレッシャーを交わして半円を描くようにハーフウェーライン付近へと戻って来ると、これを受けた広島の13番岡本が即興で超ロングシュートを放つ。ゴールマウスへとバックステップを踏んだGKの鈴木規はこのボールを難なくキャッチしたかに思えたが、掴み損ねたボールは無常にもゴールマウスへと転がり込んだ。鈴木規にとってそしてチームとって痛恨のキャッチミス。
 名古屋は選手たちもベンチも目の前で起こった信じられない出来事をしっかりと把握できないでいたのではないだろうか。GKの鈴木規だけでなく全員がまさしく茫然自失といった感じ。ベンチ前で立ち尽くす朴監督が力なく広げた両腕が、(鈴木規に対して)「一体どうしたんだ?」という感じで両掌を上に向けた状態から、そのまま両掌を下に向けた「落ち着け」というゼスチャーに変るまでですらしばらく時間を要したぐらいだ。

 このゴールによって死に体からまさしく生き返った広島と中身が入れ替わるように名古屋の動きは悪くなった。精神的なダメージと肉体的な疲労が今度は名古屋にのしかかる。
 延長前半の残りの時間をなんとか切り抜けた名古屋は、エンドチェンジの最中にようやくキャプテンの西山をはじめとした選手たちが反対側のゴールに向かって走る鈴木規に声を掛け握手を交わす。そしてそれに応えるかのように鈴木規は延長後半1対1のシュートをブロックしたりもした。しかし名古屋の選手達の動きが落ちたところを広島は見逃してはくれなかった。大﨑に変わって途中交代で入っていた22番の宮原がペナルティエリアの外を右から左へと横にスライドしながらドリブルしていくのを、DFラインが下がってしまっている名古屋は誰もチェックにいけない。そして宮原が思い切って振り抜いた左足シュートが逆サイドネットに吸い込まれた。広島、再逆転。
 終了間際、名古屋は最後の反撃。セットプレーのチャンスで再び鈴木規が前線に上がってゴールを狙う。しかし後半の再現を狙って中田健太郎が蹴ったボールは無常にも三宅の頭を越えていった。

 終了のホイッスルとともにピッチに倒れ込む名古屋の選手たち。中でもGKの鈴木規に対して広島のGKが駆け寄って声を掛けたり、高嵜GKコーチが名古屋ベンチ前のピッチ脇から反対側のサイドに倒れ込む鈴木規まで何度も何度も「ノリ!ノリ!」と声を掛け、早く起き上がって来いと促していたシーンがなんだかとても胸に響いた。

 もし鈴木規のキャッチミスがなければ、おそらく埼玉のピッチに立っていたのは名古屋だっただろう。しかし今大会を通して本当に素晴らしいプレーを見せていた鈴木規への評価はこのひとつのミスではなんら変らない。後ろからの的確なコーチングにDFラインの裏に出来るスペースへの飛び出しはラインコントロールが不安定な名古屋DFをいつも支えていたし、素早く正確なフィード(スロー)は名古屋に何度も攻勢をもたらした。朴監督の言うように「総合力」では去年までの長谷川と比べても決してひけを取らないようなパフォーマンスだった。
 同じことは広島相手に持てる力を出し切ってプレーしていた他のプレーヤーについても言える。選手たちは、この悔しさを胸に刻みながらも、立派な戦いを見せ3位という成績を残したことを誇りに思って次のステップへと進んで行って欲しい。彼等の闘いぶりはさらにひとつ先へと駒を進めた昨年チームをに勝るとも劣らないものだったと言っても決して過言ではないだろう。
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by tknr0326g8 | 2007-10-08 00:17 | Youth
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