Grampus Diary from TOKYO
by tknr0326g8
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高円宮杯 決勝 名古屋U-18×浦和ユース @埼玉スタジアム
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 ひと言で言うなら“大人と子供”のような試合だった。そしてそれが局地的なフィジカルの差に端を発したものであったことを考えると、名古屋が浦和に勝つことだけに集中するなら、せめて三年生と二年生を中心としたスタメンを組んだ方が良かっただろうし、後半のキックオフに当たって行う交代も矢田→加藤翼ではなかっただろう。前半に山田と原口によって決められたミドルシュートは高校生レベルはおろかプロでも滅多にお目に掛かれないスーパーゴールだったが、名古屋でああいうゴールを決めることが出来るとすればその数少ない候補である鈴木がベンチを温めているという事実、これが浦和と名古屋の違いであり、そのサッカー観や目指している方向性が真っ向からぶつかった結果が1-9というスコアだった。

 道すがらKIOSKで購入したエルゴラッソによれば、「グループリーグではあえて真っ向勝負を挑んで完敗したが、今度は恐らく正面突破ではなく側面攻撃を試みるはず」「この一戦、朴監督は周到な浦和対策を巡らすはず」といった論調が並んでいた。確かに、勝ち負けが全てではないユース世代で初タイトルが懸かっているからといっていきなりスタメンを変更してくるとは考えづらいが、グループリーグで完敗を喫した浦和相手に何の準備もなく臨んで来るとは到底思えなかったし、二日前の準決勝で作陽がひとつの見本を示していたことを考えれば、当然会場でビデオを回していた名古屋としてもなんらかのインスピレーションを受けていたと考えるのが妥当だろう。しかしキックオフと同時にピッチ上で展開されたサッカーは(少し硬かったことを除けば)いつも通りの名古屋のサッカーで、それはまるで大会を勝ち進む中で少しづつ積み重ねて来たチームの成長を確かめようとするかのようだった。いや、もしかすると朴監督は色々と策は授けていたのかもしれないが、それすらさせないほどに浦和の圧力が凄かったのかもしれない。

 浦和というチームを考える上で対戦相手が最もナーバスになるのはやはり原口と高橋という両ウイングだろう。特に原口は今大会何度も高校生離れしたゴラッソで観客の度肝を抜いているこの年代のスタープレーヤー。今大会から4バックを採用している名古屋は表面上(システム的に)は彼らにスペースを与えていないが、グループリーグで対戦した時にも彼等(高橋は仙台カップで不在)と対峙したSBが1対1でかなり振り回されてそこからやられていた。両SBにとっては大変な仕事だがここを抑えなければ名古屋に勝機はなく、逆に言うならSBが彼等を潰すことが出来れば名古屋が試合のイニシアチブを握ることも不可能ではないはずだった。
 しかし、おそらく朴監督も十分にケアしていたであろう彼らの攻撃に対してサイドでなんとか蓋をしたと思ったところで、名古屋からしてみれば堰き止めても堰き止めてもこぼれて行ってしまう水のように、名古屋の守備ブロックは中央に穴を開けてしまい、そこから浦和の攻撃が溢れ出るのを塞ぎ切れなかった。そう浦和には中央にも今大会絶好調の元U-17日本代表山田直樹と背番号10を背負う田仲智紀という優れたアタッカーがいたのである。そしてそこに穴を見つけるや浦和は原口や高橋も集まって来て徹底的に狙って来た。
 名古屋が中央に穴を作ってしまった理由は明白だ。アンカー役を務める一年生の小幡がフィジカル面で浦和のアタッカーに太刀打ちできなかったこと。山田のミドルも原口のミドルも彼らのすぐ脇にいたのは小幡だったが、フィジカルコンタクトでバランスを崩されスピードで置いていかれ鋭い切り返しに振り回されるといったプレーが続いていた。身長160cm(とパンフレットには記載されている)の小幡は166cmの山田なんかと比べてもひと際小柄に見える。もちろん小幡にはその身長を補うだけの技術とセンスがあり、これまでの試合のレビューでも書いて来た通り今大会を通じて高校年代でも通用する球際の強さを身に付け十分に“戦える”選手になってきた。しかしアルベスのポストプレーを軸とした名古屋の攻撃を速い寄せによって寸断したところから始まる浦和の攻撃は、名古屋からしてみれば否応なしに小幡の相方の岸が前線に飛び出したところをこれまた高校生離れしたパススピードで一気に突く形になっており、ただでさえ個々が強力な浦和の攻撃を小柄な小幡が中盤でひとりで対応せざるを得ないような状況にしばしば陥っていた。グループリーグで浦和と対戦した時と比べれば、前を向いた時には競り合いでもかなり戦える(勝てる)ようになっていた小幡だったがこれではさすがに分が悪い。

 前半3点のリードを許した後、浦和が一息ついたこともあってか、何度も決定機を作り出し右サイドをエグったアルベスの折り返しを正面で奥村情が蹴りこんで1点を返したまでは良かったが、その後終了間際に2点を奪われ試合の趨勢が決まってしまったことは朴監督にとっても誤算だったに違いない。それによって判断が鈍った(選択を変更した)のかどうかは定かではないが、後半開始に当たって朴監督が行った選手交代は少なくとも俺にとっては予想外のものだった。左サイドの矢田に代えて1年生の加藤翼を投入した朴監督は、前線をアルベスと加藤の2トップ、岸寛を左に出し、奥村が右、センターで磯村と小幡にコンビを組ませた。DFラインの裏を狙ったシンプルなロングボールぐらいしか攻撃の糸口がなかった(前線と比べれば決して強くない浦和のディフェンスにはこれだけで十分にチャンスは作れてしまっていたが・・・)前半から、磯村を中央に持ってきてボールに絡ませる機会を増やしてもう一度攻撃を作り直そうという狙いだろうか。
 もし俺が監督だったならば、ハーフタイムで小幡を下げてセンターを岸寛と磯村で組ませ、右サイドには三浦俊を投入していただろう(もしくは奥村を右に下げ鈴木を前線に投入)。そうなると小幡にとってはグループリーグに続いてハーフタイムでの交代となってしまうが、出続けることによって得られるものよりも失うものの方が大きいように思われたし、そして何よりフィジカル的に浦和に対抗出来る選手によって中央の穴を早急に塞がなければならない。磯村をセンターに回すのは攻撃面はもちろん守備面でも大きいように思われた。また、フィジカルで押されている相手に対して、これまた一年生で164cmと小柄な加藤翼を投入するというのも俺には解せない。確かに加藤は投入されるやその持ち味を発揮し鋭い飛び出しから独特のリズムを持つドリブルで何度となく浦和陣内深くへと切れ込んでいた。しかしそこからラストパスが出てくることはなかった。ラストパス直前の切り返しが全部浦和DFのリーチに引っ掛かってしまっていたからだ。そこには歴然としたフィジカルの差が存在していた。この状況で攻撃の切り札として加藤翼を使うのであれば、クラ選の頃のようにアルベスをトップに置いてその後方から奥村と加藤で仕掛けさせるやり方にしないと苦しい。

 こうなると名古屋が行き詰まってしまうのは時間の問題。6点目、7点目、8点目と加点されていく頃には朴監督もテクニカルエリアに出ることもなく、ベンチの柱にもたれかかって呆然と試合を眺めるしかなかった。8点目を奪われ残り10分となったところでようやく小幡に代えて三浦という二枚目のカードを切ったが、我慢して見守っていれば好転するほど事態は深刻ではなかったのだろうか。前半にDFライン裏へのボールで簡単にチャンスが作れてしまったこともあってか、後半になっても名古屋はロングボールが目立ったが、浦和ディフェンスもこの攻撃には慣れてきてしまっていた。そして矢田を下げ磯村を真ん中に持ってきた影響からか、後半になると浦和相手に最もやってはいけない中央に寄った攻撃が増えカウンターを喰らう悪循環に陥っていた。もう少し早く手を打っても損はなかったに違いない。

 決勝という大舞台で歴史に残る大敗を喫してしまった名古屋。正面からぶつかるには浦和というチームは強大過ぎた。これまで戦ってきたチームは、強豪チームではあってもあくまで「高校」の枠に収まっているチームだったが、浦和はまるでカテゴリーがひとつ違うチームのようだった。そんな相手に対して、高校レベルで普通に通用するテクニック、高校レベルで普通に通用するフィジカル、高校レベルで普通に通用する戦術というのは意味を成さなかったということ。こういうスーパーチームを凌駕するためには、それらが程よくブレンドされているのではなく、何かひとつ突出したものを作らなければならない。俺はフィジカル至上主義でも身長至上主義でもないが、技術で相手を上回るならそれを生かすサッカーをするべきだろうし、フィジカルにしても同じことが言える。もしくは相手を徹底的に研究してその長所を消し弱点を突くような戦術を磨き上げるということかもしれない。
 ここまで来たらあとは「楽しんで来い」という言葉だけで決して暢気に何も考えずに選手達を決勝の舞台へと上げさせたわけではないだろうが、結果的にそんな決勝の舞台を「楽しむ」ことが出来なくなってしまった選手たちには少々酷な結末だった。これを何らかの糧としていつか「あの日があったから今の自分がある」と言えるような日が来ること願わずにはいられない。そしてこのチームをここまで引っ張り上げここ三年で二回の準優勝とベスト4一回という結果を残した朴監督以下のスタッフ、それに応えて頑張った選手たちは賞賛に値するし、準優勝という結果を誇りに持って欲しいと思う。
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by tknr0326g8 | 2008-10-13 15:52 | Youth
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