Grampus Diary from TOKYO
by tknr0326g8
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別府キャンプ2012 9日目 午後練習
 ロンドン五輪最終予選に臨む永井が再びチームを離脱したものの、今日からユース所属のニッキ(新高3)、北川、森(ともに新高2)の三名が加わり、さらにはユース生え抜きの磯村が日本代表候補に選出(それをネタにかなりイジられていた)と話題には事欠かない名古屋の別府キャンプ。

 時折ピッチを襲う強風と小雪が舞う中で行われた午後の練習は、喜熨斗コーチの指導のもとにアップを兼ねたパス交換の後、(ピクシーの粋な計らいか)観客席の目の前で変則ミニゲームが行われた。変則のミニゲームは、ダブルボックスサイズに区切られたコートで通常サイズのゴールマウスを使用。GKを含めた11人対11人で行われるが、コートの中に入れるフィールドプレーヤーは5名で、残りの5名はラインの外側に一定間隔で並びコートの外からゲームに参加する。コートの外の選手達はラインを越えることが出来ず、ボールタッチもワンタッチ限定、コートの外の選手同士でパス交換をすることは出来ない。新加入の田鍋以外はそれほど戸惑っていなかったところを見るとシーズン中にもこの形式でのトレーニング(ゲーム)は行っているのだろう。ちなみに人数的な問題か、このミニゲームに加われなかった、ユース出身の高原、水野、佐藤と上記のユース組三名はボスコの付きっきりの指導のもとで空いているゴール(とGK一名(ローテーション))を使ってサイドからのクロスに合わせるトレーニング(サイドでのもらい方やゴール前への入り方を入念に確認していた)や、DFを背負ってボールを受けた状態(ボールのもらい方)からゴールに向かう反復練習を行っていた。

 ミニゲーム組で目を引いたのはまず田中輝。二年目の今シーズンを勝負の年と位置付けているのか、序盤は積極的にゲームに絡みアピールを続けていた。それ以外では不完全燃焼の一年を経て(またロンドン五輪という目標も見据え)とにかくモチベーションが高かった金崎、そして石櫃というライバルが加わったことで刺激を受けているのかこの時期にしてかなりキレのある動きを見せていた田中隼だろうか。ユース出身のルーキー達とは離れて一人ミニゲームに参加していた期待の新人・田鍋はまだまだ周りに気を遣つている印象で自分の持ち味を発揮出来ていないような感じだった。
 ちなみに日本代表に選出されたばかりの磯村はと言えば、決してそれがプレッシャーになっているわけではないのだろうが、一世一代の晴舞台を前にしていることを考えると少し不安の残るプレーぶりだった。一週間後のキリンチャレンジカップで磯村は初キャップを記録することが出来るだろうか。
 そして抜群の存在感でチームを引っ張っているのがやはり闘莉王。ミニゲームでも誰より勝負に拘る姿勢を見せたり、チームメートに常に声を掛けるなど、彼の存在がこのトレーニングの効率を上げていることは間違いない。実際もし闘莉王がいなければこのトレーニングも、もう少し雰囲気が緩んだり、選手達が淡々とこなすだけになってしまっていただろう。その意味でも闘莉王のチーム残留は大きな成果だ。
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by tknr0326g8 | 2012-02-17 23:59 | Topics & Issues
2008 名古屋グランパス イヤーDVD レヴュー
 1996年以来となる名古屋のイヤーDVD(当時はイヤービデオ)。昨年発売された「LEGEND OF STARS」の出来が個人的にはイマイチだったので今作品にもあまり期待していなかったのだが、予想に反してよくまとまった作品に仕上がっている。そして(ありものの映像を全部使いました的なやや過剰感のある)特典映像も、ヨンセンの在籍全ゴールなどサポーターのツボを押さえた企画によって構成されている。

 実際昨シーズンの名古屋はイヤーDVDを作成する上で非常にまとめやすいシーズンを送っていた。連勝したかと思えば連敗、そしてまた連勝、最後は勝てない苦しみを一ヵ月にも渡って味わい、土壇場の連勝で優勝に望みをつないだ。これがフェルフォーセンの二年目のように開幕から怒涛の連勝を記録した後は連勝もなく勝ったり負けたりを繰り返していたとしたら一体どやってまとめたのだろう。
 そしてピクシーの存在がDVDの構成をさらに容易にしている。他チームのDVDがどういった構成になっているのかは分からないが、パッケージにも一番大きく写真が扱われているピクシーのコメントを差し挟みながらシーズンを振り返る構成はシンプルで分かりやすく、逆に言えばこれ以外に昨シーズンの名古屋を振り返る術はない。フェルフォーセンのもとで燻っていた玉田がいかにしてモチベーションを取り戻したのかとか、中村がフェルフォーセンのサッカーとピクシーのサッカーの違いをどう感じていたのかとか、シーズン終盤の勝てない時期にチーム内で何が起こっていたのかなど、選手達の声にも興味はあるが、それは次回作へと譲りたい。

 個人的にはユースの活動の一部が「名古屋グランパスユースの躍進」と題して特典映像の中に収められている点が高ポイント。扱いの大きさにはやや不満が残るがここに入ることに意義があると俺は思っている。
 高円宮杯で二年ぶりにファイナリストとなったU-18は決勝で浦和ユースに1-9と歴史的な大敗を喫したこともあってか、準決勝のFC東京U-18との試合の模様が収録されていた。この大会から突如得点能力が覚醒したアルベスの先制点とスーパーサブとして後半途中から出場した三浦俊のダメ押しゴール、そしてコーナーフラッグに向かって走り出しながら喜びを表す三浦俊に対して病気療養中でマスク姿のキャプテン安藤が抱き付くように飛び掛かるシーンがゴール裏・ピッチレベルからと思われるカメラ映像によって収録されている。ユースレベルの国内最高峰とも言われる大会でなぜ準決勝にもなってスタンドからのオフィシャルカメラ映像がないのかは甚だ疑問だが、逆にこれはこれでリアリティがあって良いかもしれない。あと願わくば決勝戦の映像も少しは入れて欲しかった。さすがに失点シーンを全て入れろとは言わないが、ファイナリストであることはそれはそれで名誉なのだから。悔し涙を流しながら表彰台に立った磯村の姿なども今後につながるものだと考えれば決して封印されるべきものでもない。
 クラブ史上初めてクラ選を制したU-15は決勝戦と瑞穂での報告会という構成。決勝戦の映像はオフィシャルの記録映像のようで角度などもしっかりしている。であるとするならば、高原のゴールと終了のホイッスルだけでなくもう少し色々なシーンを観てみたかったような気がしないでもない。ちなみに高原のゴールシーンは映像だけ見るとやけにフリーでボールを受けた高原がそのまま個人技で持ち込んで決めたようにも見えるが、名古屋のDFがボールを奪った時にはまだ手前のDFにマークされていた高原は、水野にボールが渡ると同時に外にふくらむような動きでマークをはがし、その一瞬の隙を見逃さず水野が寸分の狂いもなく高原にラストパスを送っていた。この大会でしばしば見られたこのゴールデンコンビによる阿吽のコンビネーション。その一端がDVDでも垣間見られる。
 クラブ史上二度目の全少出場で決勝進出を果たしたU‐12は、4-0と圧勝した準決勝の水原SS(新潟)戦の試合映像と瑞穂での報告会の模様が収録されている。こちらもU-18同様少しぐらい決勝の映像を入れても欲しかった。決勝戦は接戦だったしスタンドも平日開催の準決勝と土曜日開催の決勝では観客の入りが全く違っていたから尚更。そこにベスト4に入った1月のバーモントカップの映像も入っていれば神レベルの仕事だったが・・・。

 ともあれ、来シーズンもイヤーDVDの制作が継続されるよう、チームにはJリーグやACLで好成績を残してもらうとともに、95年や96年のイヤービデオに映っている頃のような熱気がスタジアムに戻って来ることを期待したい。あと次回作に向けて希望があるとすればぜひ専属のカメラを入れて欲しいということ。選手達のモチベーションを高めることに秀でるというピクシーがハーフタイムにどのように選手達い語り掛けているのかといったことを見てみたいというのは高望みし過ぎだろうか。
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by tknr0326g8 | 2009-03-02 00:43 | Topics & Issues
2008 シーズンレビュー・その3 (トップチーム篇)
 クラブのレジェンドであるピクシーを監督に据えた今シーズンは期待と不安が半々に入り混じった中でのスタートだった。昨シーズンのレビューの中でも書いた通り、俺はピクシーの監督としての資質についてはむしろポジティブに捉えていたが、実際にピッチ上でプレーするのは選手であり、いくらピクシーが笛を吹けども肝心の選手が踊らなければ成功は望めないわけで、クラブにとって最後の切り札であるピクシーで失敗した時のリスクを考えると、ピクシーの登板はもう少しチームが成熟してからの方が良いのではないかと思っていた。
 ピクシーに関して不安があったとすればやはり指導者としての「経験」の部分。ただそれ自体はコーチングスタッフなどによって十分に補っていけるものであり、むしろ俺が心配していたのは、それが選手達の「言い訳」の材料に使われるのではないかということだ。名古屋というクラブには伝統的に「言い訳体質」が染みついておりそれを許容してしまうような甘さがクラブを取り巻く環境には存在する。指導経験のない名前だけの新米監督は格好のスケープゴートになりかねなかった。

 そしてチームの始動を目前に控えた1月、さっそくフィールドプレーヤーでチーム最古参の大森が移籍志願をブチ上げる。真意のほどは定かではないが、一部報道などによれば大森に対して全幅の信頼を寄せ起用してくれたフェルフォーセンの後任にはそのフェルフォーセンのもとでコーチを務めたドワイトを推していたという話もあり、そこには新人監督ピクシーに対する軽視とそんなピクシーを監督に据えたクラブに対する不満が見え隠れする。久米GMはこのタイミングでの中心選手の移籍がチームに及ぼす影響を考えてか慰留に努めて大森を翻意させたが、むしろその立場も顧みずチームの和を乱すような選手は移籍させるべきだったと俺は思っている。残り少ない現役生活を自らの望む形で全うしたいという思いは尊重するが、大森の行動は明らかに周りに対する配慮を欠いていた。

 戦力補強の面では、層の薄いポジションのバックアップに三木や深井といったベテランを獲得したものの、昨オフの目玉であった家長を取り逃がしたことで、本田と金正友という二人の主力が抜けた補充にマギヌン一人という差し引きで考えればマイナスな感は否めなかった。ただスピラールがシーズンの半分ほどしか稼働していなかったことを考えると、ピクシーが母国セルビアから連れて来たバヤリッツァが持てる力を発揮すれば戦力的には上積みされる可能性もあり、新監督のもと一からチームを作り直すよりは、前任者のベースを踏襲しつつ土台を固める一年としてはかえってこの方が良かったのかもしれない。

 そうして迎えた新シーズンの開幕。豊スタに京都を迎えた名古屋は結果こそ1-1のドローに終わったものの昨シーズンからは見違えるほどのアグレッシブなサッカー披露し、続く第2節にはAWAYで2007年のアジア王者・浦和を粉砕して初勝利。その勢いに乗って破竹の6連勝を記録した。個人的にはピクシーは意外と堅守速攻のカウンター型のチームを作って来るのではないかと予想していたが、ピクシーが標榜する「美しく攻撃的なサッカー」の特徴はパスをつなぎながら徹底的なサイドアタックを行うことにあった。サイドチェンジを入れながらサイドを基点に攻撃するスタイルはベンゲル時代を彷彿とさせるが、そこにサイドバック(SB)が絡んで数的優位を作り出す点では時代の潮流に沿ったピクシーのアレンジが加えられている。フェルフォーセン時代と比べてもとにかくタテにボールが入り前に進んでいく攻撃は観ていても爽快だった。フェルフォーセンが徹底していた前が詰まったら無理をしないで最終ラインまでボールを戻して作り直すという考え方はパスサッカーの常識だが、そうしたスタイルが日本人(特に名古屋のようなチーム)に正しく理解され根付くには時間が掛かると俺は思っている。実際07シーズンの名古屋では必要以上に最終ラインでの横パスが横行している気がしていたし、いつしかボールを奪われないことが目的となり安全志向でチャレンジする回数も減ってきていた。そう考えるとピクシーの意識付けはチームにも上手く浸透していたようだ。

 しかし対戦相手が名古屋の戦い方を把握していなかった開幕当初はともかく、相手に研究されてくると次第に戦いは苦しいものになっていった。そしてそれが顕著な形で出ていたのがリーグ戦初黒星を喫した東京V戦だ。4-3-1-2のようなフォーメーションのヴェルディは、名古屋の攻撃の基点となる両SHに対してむしろそこにボールを誘い込み、SBと中盤の「3」の両サイドの選手が挟み込んでこれを封じ込めた。このフォーメーションはヴェルディがフッキ欠場によって苦し紛れに組んだものだったというのだから何とも皮肉な話だ。
 名古屋は基本的にボランチの二人がゲームメークに関与しない。ボランチの仕事はサイドが詰まった時にサイドチェンジの中継地点として右から左へボールを受け渡すことぐらいで、前線にボールを入れるのはむしろSB(阿部)を中心にDFラインの役目だった。そこから両SHや2トップにボールが入ったところで名古屋は攻撃のスイッチが入る。ヨンセンにクサビのボールを当てて相手ディフェンスを真ん中に集中させることで両サイドにスペースを作り出し、いい形で両SHにボールが渡れば後ろからSBがクロスオーバーして数的優位を作り出すというのがオーソドックスな名古屋の攻撃だが、ヨンセンへのパスコースを消されると苦し紛れにSHにボールを回すしかなくなってしまう。当然そこではマークも外れていなければ守備の組織も崩れていない。名古屋のSBがオーバラップして数的優位を作り出す前に相手に囲まれて逆に数的優位を作られてしまうと名古屋は打つ手がなかった。そんな中でも名古屋が夏場に勝ち点を積み上げることが出来、最終節まで優勝争いに絡むことが出来たのは、相手のマークをもろともしない強引な突破と得点力によって今シーズンの急成長を改めて印象付けた小川と、「中途半端」なポジショニングと抜群のキープ力で攻撃に変化を付けたマギヌンの両SHコンビのパフォーマンスがレベルを超越したものだったからに他ならない。

 またそんな中にあってクローズアップされたのが玉田の存在だった。ピクシーのもとで輝きを取り戻した玉田は日本代表復帰を果たし、豊スタでのコートジボワール戦や神戸でのシリア戦、さらにはW杯最終予選でもウズベキスタン戦・カタール戦でゴールを積み重ねているが、クラブ(名古屋)にとっても代表で不在だったナビスコカップ準決勝(大分戦)で逆にその存在が見直される結果になった。単なるドリブルが武器の俊足ストライカーという枠に収まらないプレースタイルの玉田は、チームが攻撃に詰まった時には中盤に下がってボールを引き出し機能停止寸前のパスサッカーに循環と再鼓動をもたらすことが出来る。完全にスペースを消され名古屋の攻撃が大分の予測の範囲を越えられない状況で玉田の存在が必要とされたのも当然の成り行きだった。
 ただ玉田が担っているそんな仕事はアーセナルで言えばセスクがやっている仕事であり、個人的な感想を言うならばWボランチのうちのどちらかがそれをこなすのが理想だと思う。そしてシーズン前に掲げた10ゴール10アシストというFWとしての目標に遠く及ばなかった玉田のクラブでの成績には全く満足出来ない。チームの攻撃が行き詰り始め玉田のプレーエリアが下がっていくとともに、シーズン開幕当初に見られていたようなヨンセンが引いてポストを受けた裏のスペースを狙うようなコンビプレーが見られなくなったのも残念だ。充実した陣容の中盤から良いパスが出て来る代表ではゴール前(アタッキングサード)での仕事に集中してゴールを量産している様子を見ているとその思いは益々強くなる。

 一方の守備では、既に語り尽くされた感があるが、裏を取らせないことを念頭に置いたラインコントロールを行うDFラインと「前に」ボールを追い回すボランチの間のギャップを使われて失点するシーンが目立ち、小笠原(第14節・鹿島戦)や成岡(第17節・磐田戦)やウェズレイ(ナビスコ準決勝・大分戦)などに鮮やかなミドルシュートを叩き込まれたのはその象徴的なシーンだった。また攻撃においてはプラスに作用していたマギヌンの中途半端なポジショニングが守備に回ると組織のバランスを崩してたところを見るまでもなく、4人の中盤がフィールドの横幅を均等に守るというよりはWボランチへの負担が極度に大きい名古屋の中盤は、この二人がその驚異的な運動量によって前後左右に走り回って無理矢理スペースを埋めていた感が強く、中盤でしっかりとボールを動かしてゲームを作って来るチームに対してはいいようにパスを回され後手に回ることを余儀なくされた。
 ただピクシーは例えば第19節の川崎戦あたりで見せたように夏場に向けて前線から無理にボールを追うのではなくまずはそれぞれのポジションに戻って守備ブロックを作りそこからカウンターを狙うような変更を施したり、シーズンも終盤に近付くにつれDFラインも前への出足が良くなり中盤とのギャップが気にならなくなるなど、微妙な調整を行いながらシーズンを乗り切った。それはセットプレーについてもしかりで、一向に改善しなかったセットプレーからの決定力とは対象的に、ベンゲル式とフェルフォーセン式をミックスしたようなピクシー流のゾーンディフェンスに対してあの手この手で挑んでくる相手チームに対して、少しづつ修正を加えながら穴を消して行った。実際高さでは他チームに対して圧倒的な優位性を持つ名古屋がゾーンで守るという選択は正しく、対戦相手はニアやファー、ヨンセンと後ろの選手のギャップ、ペナルティスポットのあたりとゾーンを外したボールを蹴り入れてきたが、しっかりと集中してさえいればそう簡単に失点するような気はしなかった。

 結果的に今シーズンの名古屋はリーグ戦で最終節まで優勝争いを演じて3位、ナビスコカップもベスト4という好成績を残した。勝ち点3が必要だった最終節でも勝ち切れなかったことや天皇杯でなんとなくゲームに入って準々決勝で手負いのG大阪に敗退したことなど歯痒さも残るが、ピクシーの監督初年度ということを考えれば、チーム間の実力が均衡して大混戦だったことを差し引いても上々の結果と言える。しかしおそらくこのままでは来シーズンも同様の結果を残すことは難しいだろう。それはシーズン終盤の失速を見るまでもなく明らかだ。
 他チームのマークが厳しくなるであろう09シーズンは勢いでは勝ち抜けないだろうし、中盤を中心にもっとソリッドな組織を作らなければならない。また過密日程を考慮すれば、もっとゲームをコントロールし、苦しい中でもしぶとく勝ち点3を獲得する勝負強さを身に付けなければならない。そしてそのためには中盤のWボランチがもっとボールに絡んでゲームを作らなければならないし、セットプレーからの得点力を向上すべく精度を上げることが必須条件だ。

 チームは既に新シーズンに向けて動き出している。二年半の間チームの最前線で身体を張り続けたヨンセンに代わり札幌からダヴィを獲得し、藤田、大森、米山、三木といったベテラン選手との契約も更新せず若返りに踏み切った。横浜・田中隼の獲得なども噂され、年が明ければ補強の話ももっと具体的な姿を見せてくるだろう。OB路線での組閣も進んでいる。クラブには財政面など俺達には見えない事情があるので、一ファンとしてただ信じて待つことしか出来ない。(ユースまでOB路線にするかどうかは別問題だが・・・)
 個人的にはヨンセンからダヴィへのスイッチについては前向きに捉えている。100%チームのために闘ってくれる選手だったヨンセンは、さすがにシーズン終盤には相手のマークもキツくなり得点のペースも落ちたが、いわゆるハズレのない選手だった。チームがどんなにだらしないパフォーマンスを披露した試合でも、ヨンセンに対して「裏切られた」気分で競技場を後にしたことは一度もない。しかしピクシー自身が目指しているサッカーを実現する上でDFラインの裏に抜けるスピードを持ったストライカーが必要というのであればそれは仕方がない話。
 例えば、前からプレッシャーを掛けて奪ったボールを素早く最前線のヨンセンに預けたとする。ヨンセンなら相手DFを背負いながら味方の上がりを待ってそれを使うことが出来る。だがダヴィならDFラインの裏へ抜けながらボールを受けることが出来るし、相手を背負ってボールを受けてもそのままターンしてゴールへと向かうことが出来る。最大のゴールチャンスであるカウンターからゴールへの最速ルートを考えた時優れているのは後者だが、ヨンセンにはその選択肢はない。またヨンセンのゴールパターンはサイドからのクロスに限定される(スルーパスからゴールを決めたのは07シーズンの味スタで本田のパスから決めたのぐらいしか思い付かない)が、ダヴィなら(ハイクロスに合わせる技術ではヨンセンに及ばないものの)得点パターンにもう少しレパートリーを広げられるだろう。もちろんそんなダヴィを生かすためには、中盤のセンターにダヴィの動き出しを見逃さずパス(スルーパス)を送れるような選手(札幌で言えばクライトン)が不可欠だし、クロスボールからの決定力の低下を補うためには玉田を筆頭にボックス内へと詰める人数を増やさなければならない。
 不安があるとすれば、まずはダヴィと玉田のプレーエリアが被ること。もちろん玉田もダヴィも一流選手なのでそれぞれの持ち場を離れてもプレー出来るだろうが、それぞれが最も得意としているエリアが重複していてはパワーは半減してしまう。あと意外と見落としがちな点ではあるが、ヨンセンが抜けた後にセットプレー時のゾーンディフンスが機能するのかどうかということ。ダヴィもサイズだけ見ればヨンセンと遜色ないが、個々のプレーヤーが最大限の集中力と戦術的な規律を守ることで成り立つ名古屋のゾーンディフェンスにおいて、信頼度抜群だったヨンセンの代わりがダヴィに務まるだろうか。これは竹内の代わりに田中隼が入ったとしても同じこと。ボールサイドから順にヨンセン、増川、吉田、竹内という180cm超の選手が並んでいたゾーンディフェンスから、ダヴィ、増川(バヤリッツァ)、吉田、田中という並びに変わったとしたら、不安を感じるのは俺だけではないだろう。

 とにもかくにも、ACLというクラブ史上最大の難関にしてチャレンジが待ち構える2009年は、今年以上にクラブが一丸となり強い持ちを持ってシーズンに臨み良い成績を残して欲しいと思う。
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by tknr0326g8 | 2008-12-31 21:32 | Topics & Issues
2008 シーズンレビュー・その2 (U-15篇)
 名古屋のU-15にはかつて平林、富岡、神丸、日下などが在籍した代で高円宮杯を制した過去がある。トップ下でエースとして君臨していた10番の平林はトリニダードトバコで開催されたワールドユース(U-17)にも出場していたし、FWの富岡もU-16日本代表としてアジアユースを戦っていた。決勝戦で鮮やかな直接FKを決めた日下(現刈谷)や、破壊的なドリブル突破で左サイドの深谷(一学年下)とともにサイドアタックを担っていた右アウトサイドの神丸もU-16代表候補に選出され合宿に呼ばれている。キラ星の如くタレントが揃った当時のチームはセンセーショナルだったが、それから9年の歳月を経て現れたのが今年の「黄金世代」だった。

 三年前の中スポ「ユースニュース」の中で神戸さんが「才能のある選手が多くいる」と書いていたことから勝手に「黄金世代」と呼んでいたこの世代。その原石たちは時を同じくしてヴェルディから迎え入れられた菅沢コーチのもとで順調に成長し、中学最終学年を迎えた今年のクラ選で全国制覇を達成した。言葉にするのは簡単だがこれは大変な偉業。そしてそれにも増して凄いと思うのは菅沢監督が今年のイヤーブックの中で「高円宮杯、クラブユースの二冠を狙う」と高らかに宣言して、実際にそれを狙えるところまでチームを引っ張ってきたこと。これは全国のレベルを知る指導者でなければ到底出来ない芸当だ。かつてトップチームでシーズン開幕を前に「今シーズンは優勝出来る」と断言して、終わってみればクラブ史上最低順位に沈むという失態を演じた主力選手がいた。自分達の力をトップレベルと比較して見極めそこに対して具体的なアプローチを示せるかどうかという点ひとつとっても菅沢監督が優れた指導者であったことが窺い知れる。

 俺がこの世代を初めて観たのは去年の高円宮杯・決勝トーナメント一回戦。言うまでもなくU-15世代の最強チームを決めるこの大会で、名古屋は一学年下のU-14の選手がスタメン11人中実に7人を占めていた。さらに驚いたのはキャプテンマークを巻いていたのが二年生の水野だったということだったが、試合を観ていれば彼がキャプテンマークを巻くのに最適な人物であるのは一目瞭然だった。試合は後ろからパスをつなぐ名古屋に対して前線からハイプレスをかける浦和という展開でスタートし、これにつかまった名古屋はハーフコートから出られないような時間帯が続いた。浦和にとってみれば名古屋は自分達のスタイルを実践する上でこれ以上ないカモだった。しかし試合はそれだけで終わらない。後半になって浦和の足が止まり始めると名古屋のパスが面白いように通り始め、前半の一方的なペースが嘘のように逆に浦和を圧倒するような展開になった。結果的に1-2で敗退してしまった名古屋ではあったが、試合内容は(二年生にとって)翌年に向けて期待を抱かせるのに十分なものだったし、個人的にもまた観てみたいと思わせるものだった。

 そして迎えた最終学年。二冠に向けての最初の全国大会が夏のクラ選だった。グループリーグ初戦でJFAアカデミー福島を打ち合いの末に下した名古屋は、(同年代のエリートを一蹴してホッとしたわけではないだろうが)第二戦でFCライオスのハードワークの前に思いもよらぬ苦戦を強いられてたものの全勝でグループリーグを突破する。正直なところグループリーグでは対戦相手のチームとも力の差が感じられ、この夏ユーロを制したスペインと同じ4-1-4-1が攻撃面でその真価を発揮していた。絶対的なエースの高原を最前線に据えて、そんなエースにひけを取らない能力を持つその下の4人も積極的にドリブルで勝負を仕掛ける。そして彼等をコントロールして攻撃を司るのがアンカーの水野。また水野は高原のホットラインでも何度かビッグチャンスを作り出していた。
 そんな名古屋にとっては決勝トーナメントに入ってからが本当の勝負のようにも思われたが、彼等が見せた勝負強さは想像以上で、俺が再び福島に舞い戻った翌週の準決勝(浦和戦)と決勝(G大阪戦)では(さすがに接戦になったものの)その攻撃的な良さを残しつつチーム一丸となって見事に初の栄冠を手にしたのだった。グループリーグでは攻撃的な役割が目立った前線の選手達も相手ボールになればすぐに戻って守備に加わっていたし、苦しい時間帯には特に陣地を回復するうえで両SBのボールを前に持ち出す力にも助けられていた。大会MVPに選ばれた高原は準決勝・決勝で決勝ゴールを挙げるなどエースの名に恥じない活躍だったが、この大会は全員がMVPだったと言っても過言ではない。

 クラ選のファイナリストとして予選免除で臨んだ高円宮杯は、ヴェルディ、京都、仙台というJの下部組織だけで構成された「死のグループ」に入った。そしてそれを象徴するかのように初戦の京都戦で敗れた名古屋が後がない状況で迎えたヴェルディ戦は、文字通り「死闘」という言葉がピッタリの戦いで、コーチ陣も気合が入っていたし、最後まで全く気を抜けない展開に観ている側も終了のホイッスルとともにどっと疲れが出たほどだった。ヴェルディは同じ関東でも個々の力を含めクラ選・準決勝で戦った浦和よりレベルが上に感じられたし、G大阪と比べても遜色ないぐらいのチームだった。そんな相手に対してチームが「美しく散る」のではなく、勝ち抜くために絶対必要だった勝ち点3をしぶとく確保したあたりもこのチームの特徴と言えば特徴だろう。勝つことだけが目標というわけでないことは明らかだが、このチームからはどうやって相手よりも多く点を取って試合に勝つかというスポーツ本来が持つゲーム性(またはそのための戦術や駆け引き)をスタッフも選手も楽しんでいるように感じることが少なくなかった。その傾向は相手が強くなるほどに顕著で、個人的にはクラ選決勝のG大阪戦やこのヴェルディ戦などで特に強く感じられた。
 最終節の仙台戦は京都やヴェルディとの得失点差を埋めるためには大量点での勝利が必要という意味でちょっとしたハンディキャップマッチのようなものだったが、苦しみながら(4-0で勝っておいて「苦しみながら」というのも変な話だが・・・)なんとかこれをクリアしてグループ1位で進んだ決勝トーナメント。今度はクラ選とは逆のパターンで、グループリーグで苦しんだ分それと比べるとやや力の落ちる相手と一発勝負のトーナメントを戦わなければならなかったことが名古屋にとっては明暗を分ける結果になった。頭から守備的に来る相手に対して名古屋は終始4-1-4-1での攻撃的なサッカーを貫き、一回戦のフレスカ戦こそ2-0でこれを破ったものの、続く新潟戦ではカウンター一発に沈んでしまう。この二試合名古屋は多くのチャンスを作っていたので、あとは決めるだけという問題ではあったのだが、無情にもシュートは何度もポストやバーを叩きGKのセーブに遭った。一週間前の仙台戦でも得点を上積み出来そうで出来ないという場面がありその予兆はあっただけにこれを修正できなかったことが悔やまれるが、彼等にはこれを次のステップの糧として更なる成長を遂げてもらいたい。そして彼等の躍進を目の前で見ていたU-14世代やその下に続くと噂される「プラチナ世代」がこれを受け継いでクラブとしての歴史を作って行って欲しい。
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by tknr0326g8 | 2008-12-30 23:18 | Topics & Issues
2008 シーズンレビュー・その1 (U-18篇)
 トップチームの天皇杯敗退を受けて全日程を終了した名古屋の2008シーズン。というわけで年内を目標に順番にシーズンレビューでも書いていこうと思うのだが、まずはJ14日にJユースカップ・決勝トーナメント一回戦でまたしても広島に敗れひと足早くシーズンを終えたU-18から。

 去年の高円宮杯で二年連続となる国立競技場でのプレーを実現しベスト4という結果を残したチームの主力のうち、アルベス、磯村、安藤、西部といったセンターラインの選手が残った今年のチーム。それ以外にも鈴木崇、岸寛といった選手達が去年からちょくちょく試合に出ていたし、年代別代表の常連だった中田健太郎や三宅徹といった超高校級の選手が抜け少し小粒になったとは言え、ある程度は安定した成績を残せるだろうというのがシーズン前の俺の予想だった。少なくともクラ選や高円宮杯の予選で姿を消すような心配は全くしていなかった。

 そんなチームを俺が最初に観たのは春先の関東遠征で、シーズン(関東大学リーグ)開幕を翌週に控えた早稲田大学の1軍を相手にトレーニングマッチを戦った時。この頃のチームは選手の配置を含めてまだ試行錯誤の色が強かったが、スタメンの2トップにはアルベスと鈴木崇が並んでいたことにまず驚かされた。驚いたと言ってもこれは俺にしてみれば嬉しい驚きで、かつての久保(現明治大)と酒井(現駒澤大)の関係を彷彿とさせるこの二人は、朴監督のサッカーではおそらく実現することのないコンビだろうと俺の中では半ば諦めていた2トップだった。技術の高さとボディバランスの良さをプレーのベースとして相手DFの前にスッと身体を入れるのが上手く柔らかなポストプレーを持ち味とするアルベスと身体能力に優れ爆発力のある突破と左足から放たれる強烈なシュートというスケールの大きなプレーが持ち味の鈴木のコンビは、組み合わせとしても悪くないように思われたし、上手く育てばクラブ史上最も破壊力があり超高校級の2トップになるのではないかと俺は思っていた。
 しかしその後全国大会に向けてチームを作り上げていく中でこのコンビは自然と淘汰されていく。3トップの頂点に位置するアルベスは不動の存在だったが、そんなアルベスをサポートするセカンドトップには切れ味鋭いドリブルを持ち味とする奥村情と一年生の加藤翼が重用された。高円宮杯を前にシステムを3-4-3から4-4-2に変更してからもアルベスとの2トップには奥村情が固定され、FW以外に鈴木がハマりそうな左SHにも二年生の矢田旭が定着。そして高円宮杯のほとんどをベンチで過ごすことになった鈴木は二年前にデビューを飾ったJユースカップではチームから離れてしまったようだ。こうして破壊力を秘めた超高校級の2トップという俺の構想はまたしても幻となった。

 ただ、アルベス・奥村情のコンビはそんな俺の浅はかな無念を忘れ去らせるぐらい抜群だった。アルベスは上でも書いたように去年のチームでも既に主力を張っており、二年生ながら安定したポストプレーによって名古屋のパスサッカーを支えていたが、今年は高円宮杯でその得点能力が開花した。クラ選のグループリーグ二試合を観た時には去年と比べるとあまりにもボールに触っていなかったので少し心配したが、高円宮杯では決勝トーナメント初戦となった藤枝での磐田戦でCKから2ゴールを決めると、横浜戦、FC東京戦でも連続ゴールを決めて4得点を固め取り。どこに出しても恥ずかしくないストライカーに成長した。中でも均衡したゲームの中で鮮やかなボールコントロールからの右足シュートをゴールに突き刺した横浜戦のゴールはベストゴールだろう。小気味良いドリブルからの思い切りの良いシュートでクラ選でゴールを量産した奥村情はテクニシャンにありがちなムラっ気もなく、とにかくアルベスの周りを尽きることないスタミナで走り続けてチャンスを作り続けていたし、試合の流れの中で中盤(SH)に回されても安定したパフォーマンスを披露していた。印象に残っているのは、左サイドからバイタルエリアをドリブルで横切りながら豪快な右足ミドルを決めたクラ選の鹿島戦と、そのドリブルを誰一人として止められなかった高円宮杯準決勝・FC東京戦だろうか。

 中盤では去年からの主力でありキャプテンでもあった安藤亮太がプリンスリーグ途中から病気により離脱。ベンゲルの寵愛を受けた喜名哲裕を彷彿とさせるエレガントなプレースタイルに加えボランチとしての激しさも併せ持つ安藤を全国の舞台で見られなかったのは個人的にもとても残念だった。しかしクラ選ではそんな安藤の高円宮杯での復帰を願って岸寛と磯村のコンビがその不在を埋めて余りあるプレーを見せていた。守備ではボールホルダーに対する素早いチェック、攻撃では前線に入ったボールに対する飛び出しと攻守に渡るハードワークに加えて、その正確な右足からセットプレーでチャンスを演出した岸寛は個人的には奥村情とともに今年のチームのMVPをあげてもよいプレーヤー。唯一のトップ昇格となった磯村もCBなのかボランチなのかSHなのか、そのポリバレント性ゆえに起用法がなかなか安定しなかったが、どこのポジションでプレーしてもそのポジションに応じたパフォーマンスによって突出した存在感を発揮していた。180cmを超える長身で技術もインテリジェンスもある磯村をどこで起用するのかは朴監督でなくても迷うところだが、それはトップチームにとっては間違いなく武器になる。個人的には前目の位置で見たいプレーヤーだが、下級生時代から選択しているいくつかの背番号の好みといいどこのポジションでもこなせる器用さといい、アーセナルからバルセロナに移籍したアレクサンドル・フレブと被る気がするのは俺だけだろうか。
 中田健太郎が抜けた左サイドを担っていたのは矢田旭。去年途中交代などで出てきたのを観た時にはドリブル突破が印象に残ったが、技術面だけでなく小柄ながらも身体が強く左足から繰り出すキックの強さと正確性を生かしたプレーはトップチームの阿部に勝るとも劣らないポテンシャルを秘めている。今年のチームでは1年生が数多く起用されていた反面、二年生でコンスタントに経験を積めたのはこの矢田だけ。来シーズンの名古屋ユースにとって名実ともに大黒柱としての期待がこの矢田の双肩に掛かることになる。

 1年生が約半数を占めていたディフェンスは左SBの本多と去年から主力だったCBの西部、そしてGKの岩田敦という三年生トリオが支えていた。本多と西部はその正確なフィードによって名古屋の攻撃の起点にもなっていて、しばしばポジションチェンジを交えながら西部が左サイドを駆け上がる(その場合本多が西部のスペースをカバー)シーンなどはなかなか面白かった。特に西部はかつての吉田麻也ほどではないにしろ二年生の時にはアンカーとしての経験を積んでプレーの幅を広げ、また三宅徹ほどではないにしろヘディングでの競り合いにも強い。それらに加えて左足でのロングフィードの精度は高校レベルでもトップクラスにあり、三木と米山の退団に伴うCBと左SB阿部のバックアップが不足しているトップチームにも必要な戦力になるだろうと思っていたが、大学で経験を積んでいつの日か瑞穂のピッチに帰って来て欲しいと思っている。

 Jrユースからの昇格が少なく心配された1年生も今年は多くの経験を積んだ。DFラインでは岸光がCB、金編がクラ選では右アウトサイド、高円宮杯では右SBでレギュラーとしてプレーしていた。前目のポジションでもクラ選では加藤翼が、高円宮杯で小幡がそれぞれレギュラーで起用されている。中盤~前線に掛けてタレントが集中している名古屋にあって岸光の存在は貴重。FWからCBに転向してそれほど時間は経っていないようだが、その冷静なプレーは1年生離れしていて安心して見ていられる。フィジカルエリートの金編も朴監督からの信頼と期待がひしひしと感じられた。クラ選では宇佐美、高円宮杯では原口と同年代のスタープレーヤーと対峙してきた経験は来年以降に生きてくるに違いない。後はどこのポジションで起用するのがベストなのかということ。かつての代表監督達が柳本を持て余したように抜群の身体能力を持つ彼の起用法には新監督も頭を悩ませるかも知れない。加藤翼は小柄ながらクラ選の初戦でCKから鹿島DFの隙を付いた先制ゴールを奪い俺の度肝を抜いた。戦術理解が高く運動量があって攻守にハードワーク出来るのが朴監督から重宝された理由だろう。高円宮杯ではチームが3トップをやめて2トップにしたことで出番を失ったが、切れ味鋭いドリブルに身体が出来てくればチームにとって貴重な戦力になる。小幡は高円宮杯から出場機会を得てCHを任された。そしてその役割は、コンビを組んだ岸寛が攻撃になると前線に飛び出していくため必然的にアンカー的なものになった。チームの中でもひと際小柄な小幡だが決してアジリティに優れるタイプではない。すなわちチームは小幡に対してダービッツのようになって欲しかったわけではない。小幡の技術の高さと左足でのパスを生かして中盤(の真ん中)でボールを支配しゲームを組み立てることを期待していたのだろう。しかし対戦相手にも一年生や二年生が多く混ざっていた磐田戦や横浜戦、FC東京戦ではこの狙いがある程度功奏したものの、ほとんどセミプロのような(鍛え方からして違いを感じる)浦和相手にはにべもなく打ち砕かれてしまった。小幡は例えるとするならば本田圭佑を三~四回り小さくしたようなタイプ。本田自身も決して使い勝手の良いプレーヤーではなかったが、本田はあの相手を吹っ飛ばすようなフィジカルがあってこその本田なだけに、どこのポジションで小幡を使うのが彼(の突出したサッカー選手としての能力)を生かすことになるのかは十分に考えなければならない。もちろんそれは小幡のポジションだけに留まらずチーム全体のバランス(どういった補完関係を作るか)の問題でもある。

 今年サブだったメンバーの中では二年生の三浦俊希が期待の筆頭。高円宮杯の準々決勝・横浜戦で途中出場ながら何かやってくれそうな雰囲気をまとっていた彼は、予想通り準決勝のFC東京戦でトドメを刺す追加点を決めた。これをブレークスルーのキッカケとして、決してその能力に見合った出場機会が得られていたわけではないこの二年間の悔しさをぶつけるような最終年を期待したい。朴監督自身あまり積極的に交代枠を使う方ではなかったので、その他のメンバーについても出場機会はそれほど多くなかったが、そんな中でも貴重な経験を積んだ近藤や大西にもそれを生かして欲しい。個人的には身長の割にヘディングが得意でなさそうな大西が本来のDFに戻ってプレーするのかそれとも引き続き前線で起用されるのかが気になるところ。大西は日本のヤン・コラーとして育てられるのだろうか。

 四年間に渡ってチームを指導してきた朴監督の退任が決まっている来シーズン、神戸―朴体制のもとでは信じられないぐらいの好成績を残してきただけにその成り行きはいやがおうにも注目の的になる。新三年生が6人しかいないことも含めて苦しい戦いになるであろうことは必至なだけに、個人的にはせめてあともう一年朴監督にやって欲しかった思いはある。来シーズンのような年にこそ朴監督のサッカーは真価を発揮するはずだからだ。クラブが打ち出した「OB路線」というものが、長い目で見た時に名古屋というクラブ自体を強くする上で必要な要素であるとするならば甘んじて受け入れるしかないが、ユースは若い指導者に経験を積ませるための組織ではなけれればOBの就職斡旋先でもない。トップチームはともかく(というかむしろ賛成な部分もあるが)、ユース選手の育成にとって何が一番大事なのかを考えた時にそれが「OB路線」であるという結論はどこかピントを外しているように感じる。もちろん名古屋が公式戦三連敗中の広島(森山監督)や今年のJユースカップを制したG大阪(松波監督)もOB路線と言えばOB路線で、次に来る指導者が優れた指導者で(トップチームへの人材供給という)結果を残すことが出来れば結果オーライとなるのだが、お題目が「OB路線」ではやはり不安は拭い切れない。とは言え、俺のような人間には東京でひたすらチームが地区予選を勝ち抜いて来るのを待っていることしか出来ないので、黄金世代が合流予定?の来シーズン、ユースも新しいサイクルを迎えたのだと思って信じて待つほかない(ちなみにこの「サイクル」を考慮すると、上で書いたような「あと1年朴監督で」というのは全く意味がない)。そしてユースの選手達が良い指導者に巡り逢い来年も東京(関東)で素晴らしいプレーを見られることを願わずにはいられない。
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by tknr0326g8 | 2008-12-28 04:12 | Topics & Issues
DVD 「名古屋グランパス・レジェンド・オブ・スターズ」
 今さらながら、先行予約していた「J.LEAGUE 15th ANNIVERSARY LEGEND OF STARS (名古屋グランパス)」のレビュー。率直な感想から言えば、クラブにとって第三者が編集した内容はやはり消化不良だった。正味2時間そこそこで15年+α分のクラブの歴史を語り尽くすこと自体土台無理な話だが、それを差し引いたとしても、このDVDは伝説のスタープレーヤーを切り口としてクラブの歴史をを紹介するといった内容ではなく、作品の大部分を占めるベンゲル讃歌とJのお荷物と呼ばれていた頃の懐古に終始してしまっている印象が強い。最近名古屋のファンになって、ベンゲルが名古屋を率いていた頃を知らない(知りたい)という人にしてみれば悪くない内容かもしれないが、同時に新しいファンからこれだけが名古屋の歴史だと思われても困るという思いもある。
 ベンゲルとの夢のような時間はたったの一年半。その数倍も費やした「万年中位」に触れずに名古屋を語ることなど出来るはずがない。さすがに(楢﨑など)現役プレーヤーをレジェンドとして祀り上げるのは躊躇われるが、クラブ史上初の得点王であるウェズレイの完全無視など、扱いにはあからさまな偏りが見られ、今回のDVDの売れ行きを見ながら「レジェンド・オブ・スターズ 2」の制作に取り掛かるつもりなのだろうかと訝りたくなってしまう。
 偏っていると言えば引用しているVTRも。やたらとヴェルディとの長良川決戦がフィーチャーされていたが、それ以上に語るべき試合はいくつもあったはずだ。小倉がベンゲルにベンチから「KILL YOU」と叫ばれたのは天皇杯の神戸戦だったが、その映像も探し切れていないし、ピクシーの「seven beautiful years」も映像が時系列を無視したツギハギになっていては台無しだ。Jリーグの直轄団体であるJリーグメディアプロモーションの制作ならば、もう少しバリエーションを持って映像を引っ張り出すことが出来なかったのだろうか。同じ映像が何度も登場する点など言語道断。つなぎのテンポも良くないので、間を置かずに二度見る気には辛い内容だ。

 そんな中にあって良かったのは、トーレスの現地インタビューと現在名古屋の下部組織でコーチを務める伊藤裕二、小川誠一、飯島寿久による対談というレアな企画。そして浅野哲也の声を久しぶりに聞けたことだろうか。

 トーレスの現地インタビューはどうやら藤原清美に全面依頼した模様で、おそらく藤原清美は鹿島版でフル回転しているであろうことが容易に頭に浮かぶが、藤原清美に頼らなければそもそもこのインタビュー自体成り立たなかったことを考えれば、方法論も含めての成功事例と言えるだろう。逆に言えばイングランドやフランスには「藤原清美」がいなかった。ここまでベンゲル崇拝な内容を作るのであれば、ベンゲルのインタビューのひとつやふたつ録って来てしかるべきだし、またこの作品中にデュリックスのインタビューがあったならば、それだけで俺の不満は半分以下になっていたに違いない。

 二度の天皇杯制覇を達成した時にいずれもスタメン出場していた伊藤裕二、小川、飯島の三人による対談も渋好みな企画。ただ彼等が「レジェンド」や「スター」であったかと言えばそれはそれで甚だ疑問でもあり、マニア受けするこの企画が特典映像(おまけ)的な位置付けにしてあれば作りとしては◎だったかもしれない。
 懐かしいついでに個人的な印象で彼等について補足するなら、伊藤裕二は抜群の反射神経でJ開幕から名古屋のゴール守ってきた元祖守護神。最近は下部組織のGKコーチとしてもお馴染で、昨年は日本代表スタッフとして韓国で開催されたU-17W杯(城福ジャパン)のGKコーチを務めていた。ちなみに名古屋がサントリーカップという年間総合タイトルを獲得した1996年に、現日本代表GKコーチの加藤好男さん(当時解説者)はNHKの速報番組の中でシーズン・ベストGKに伊藤裕二を選んでいた。しかし代表選手偏重の傾向が強いJリーグAWARDSでベストイレブンに選ばれたのは楢﨑正剛(当時横浜フリューゲルス)だったという因縁もあったりする。小川誠一は、現在の名古屋のスタメンで最大勢力を占める中村、阿部、小川佳純の市船トリオの先鞭をつけた人物。名古屋に在籍したこともある元日本代表FWの野口等とともに布啓一郎率いる市船の創生期を支えていた。DVDの作りだとベンゲル色の強いプレーヤーのようだが、ベンゲルの下ではその攻撃的な特徴に反してオーバーラップの機会が少なく、左ウイングハーフの平野孝の後方支援に専念していた。むしろその特徴を考えれば、本人が「思い出の試合」に挙げていた1999年のAWAY磐田戦を含むジァアン・カルロス就任と前後しての時期の方が輝いていた時期だったと言える。飯島は帝京高校時代に森山(現FC岐阜)、磯貝(元G大阪等)、本田(元鹿島)のチームメートとして高校サッカー界を席巻し東海大学時代にはバルセロナ・オリンピック予選の代表メンバーにも選ばれていたサッカーエリートにして、現JFA名誉会長の川淵三郎(当時Jリーグチェアマン)に「この選手がスタメンで出ているうちは名古屋の優勝はないと思っていた」とまで酷評されたこともあるミスター・オウンゴール。DVDの中でも本人が言っている通り攻撃面での特徴を持たない選手だったが、時々なぜか無茶なドリブルで持ち上がり途中で奪われてカウンターを喰らうようなシーンがなぜか俺の中では印象に残っている。

 彼等三人が現在指導者として名古屋の下部組織を担当していることはファンにとってもうれしい話。今年からはディドも戻ってきたことだし、作品の中で湘南ベルマーレのコーチとして登場する浅野哲也もいつか名古屋に力を貸して欲しいと俺は思っている。作品の中でも紹介されている通り、トヨタのクラブチームからプロ選手、そして日本代表にまで登りつめた浅野の歩んだ道はまさしくシンデレラストーリーだ。ミルン時代には突然左サイドバックにコンバートされて出番を失いそのまま浦和にレンタル移籍。移籍した途端に日本代表に選ばれたのは、本人が語っているように浦和で試合に出始めたからではなくて、当時日本代表監督に就任したばかりのロベルト・ファルカンに対してジーコを筆頭としたブラジル人達からの推薦があったからだと言われている。ブラジルでいうところの典型的な「5番」タイプの浅野に対してはブラジル人選手達も評価が高く、出身が茨城ということもあってよく鹿島移籍の噂が上がっていた。

 と、話が懐古主義に走り過ぎたが、DVD「レジェンド・オブ・スターズ」もインタビューを聞きながら懐かしいVTRの感傷に浸りたい人、そして久しぶりに小倉の小倉らしさに触れたい人にはお勧めのDVDかもしれない。
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by tknr0326g8 | 2008-10-01 01:45 | Topics & Issues
北京五輪代表メンバー発表
 今日発表された北京五輪代表メンバーに吉田麻也の名前があったことは正直意外だった。吉田の能力やリーグ戦でのパフォーマンスが同年代の他の選手と比べて劣っているとはこれっぽっちも思っていないが、18人という枠を考えるとセンターバックは2人+1人が精一杯で、トゥーロンで高いパフォーマンスを示していた青山と急成長を見せるユーティリティプレーヤーの森重が当確と考えれば、残りの1枠を吉田と京都の水本が争うというのが俺の予想だった。そして6月のリーグ戦中断期間中に水本が電撃的な京都移籍によって出番を得て本来のパフォーマンスを取り戻したこと、またA代表の経験もある水本がこのチームではずっとキャプテンを務めていたことを考えると、吉田不利の予想は免れなかった。

 しかし今日蓋を開けてみれば、水本、森重とともに選出されたのは吉田で、最も固いと思われた青山がまさかの落選となった。このサプライズの背景にあるのはおそらく反町康治北京五輪代表監督による高校の後輩・長谷川健太への配慮だったに違いないと俺は邪推する。リーグ戦第16節を終わって勝ち点19で残留ラインギリギリにいる清水から四人を北京に連れて行くという非情な判断を反町は下せなかった。そして清水から候補に挙がっていた四選手のうち、GKの山本はともかくとして、本田拓也は五輪代表で最も代えの利かないプレーヤーだし、このチーム最大のウィークポイントであるFWにあって直前合宿で2ゴールと結果を残した岡崎を外す手はない。となると、日本に残していけるのは青山しかいなかった。上でも書いたようにトゥーロンでの青山のプレーは秀逸だったが青山の代わりは吉田でも務まる(下手したらお釣りが来る)。こう考えれば合点がいく。

 と、つらつらと憶測を書いてみたが、名古屋にとっては待望の五輪代表選手誕生。振り返れば、28年ぶりの本大会出場を果たしたアトランタでは、チーム立ち上げ当初、水原、平野、谷口の三名の選手がチームに加わっていた。しかし時間とともに淘汰され、最終予選直前の合宿では小倉のあの悲劇が起こる。その後本大会に向けてベンゲルのもと急成長を遂げていた平野が再度候補へとカムバックしたが、守備的な戦いを選択した西野朗によって平野に吉報が届けられることはなかった。ちなみにベンゲル率いる名古屋において平野と二枚看板を張っていた岡山哲也は「基本技量の不足」を理由に西野からは見向きもされなかった。

 ベンゲルの指導によって強豪クラブへの扉を開いた名古屋には才能のある若手選手が集まり始めていた。1995年にエクアドルで開かれたU-17ワールドユースの舞台を踏んでいた古賀正紘と中谷勇介、これに福田健二を加えた通称“トルシエ・ボーイズ”の三人は、シドニー五輪を目指して立ち上げられたチームの初陣となった国立競技場でのアルゼンチン戦で揃って先発出場を果たした。しかし永遠の超高校級こと古賀も、トルシエに「日本のギッグスになれる」と太鼓判を押された中谷も、五輪代表チームで臨んだ98年のアジア大会で高原を押しのけてエースの地位を確保していた福田健二も結局本番前にはこのチームから姿を消してしまった。まあシドニーの場合はおまけで楢﨑のオーバーエイジというのがあったが。

 黄金世代がそのままフル代表へと昇格し、谷間世代で向かえたアテネでチャンスがあったのは原竜太と角田、川島の三人。ウェズレイやヴァスティッチ、マルケスの陰に隠れながらも、試合に出れば結果を出していた原竜太は当然のごとく代表チームにもピックアップされており、アテネ五輪へのアピールを狙って2004年シーズン開幕前に当時J2の京都移籍を決断した。しかし移籍先の京都でも出場機会に恵まれなかったことで夢は夢として終わってしまった。2003年にUAEで開催されたU-20ワールドユースで正GKとしてプレーしていた川島も、同じチームから今野や平山、菊地といった選手がピックアップされる中、結局アピールの場は何故か豊田スタジアムで行われたこのチームの親善試合での顔見せだけだった。そして最も可能性があったのは角田で、川島と同じく2003年のワールドユースに出場後、京都から名古屋に移籍しコンスタントに試合出場を続けたことで山本昌邦からもお呼びが掛かったが、吉報が届いた直後不運にも試合中の膝の負傷によりチャンスを棒に振ることになった。

 そして今回の吉田だ。春に名古屋からオランダへと移籍した本田と山形にレンタル中の豊田を加えると三人同時当選はクラブにとって異例中の異例。しかもクラブ史上初の五輪(本大会)代表に選ばれた吉田が下部組織(ユース)出身のプレーヤーというのは快挙と言っても過言ではない。あとは吉田が本大会でプレーする中で何かを掴んでさらに成長してくれれば文句はない。またクラブには、五輪でステップアップした吉田がいつ本田のように「海外移籍」を口にしてもいいように、是非来シーズンはユースの西部を昇格させて有事に備えて欲しい。
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by tknr0326g8 | 2008-07-14 23:59 | Topics & Issues
フェルフォーセンの二年間、そしてピクシーへ
 もし俺が「優」・「良」・「可」・「不可」でフェルフォーセンの二年間に評価を下すとするならば、残念ながらそれは「不可」ということになるだろう。フェルフォーセンの就任に合わせてクラブが描いていた「三ヵ年計画」(一年目でチームの基盤を作り、二年目で上位争い、三年目で優勝争い)という具体的な数値目標に対して、フェルフォーセンは二年目の昨シーズンも残留がやっとという成績しか残せなかったのだから、この評価は妥当だと思う。もちろんチームの主力たる外国人選手に怪我人が続出したことなど同情すべき点はあるし、同じような目標に対して順調にステップをクリアしていった長谷川健太と比べれば即戦力の戦力補強に恵まれなかったことなど、チームの成績はフェルフォーセンひとりの責任ではないが、それは彼の評価を覆す材料とは成り得ない。そしてそんな成績とともに俺が彼に合格点を与えられない理由は、彼が選手達の特徴を引き出せていなかったからであり、(それが彼の意図したスタイルであったかは別として)ピッチ上で展開されていたアッタキングマインドに欠けるサッカーが(ズデンコの時ほどではないにせよ)俺にとってとても退屈で魅力に欠けるものだったからだ。

 ただ「不可」と言ったところで、俺はフェルフォーセンがサッカーに対して持っているビジョンや理論といったものが間違ったものであったとは思っていないし、ましてその人格などの面で彼を否定するつもりなどは毛頭ない。特に前者に関しては、それが世界的な潮流から見ても決して的外れなものではなかったことは、半年間限定のつなぎとはいえ母国オランダのトップクラブであるPSVから請われて監督に就任したことが既に立証している。
 ではそんなフェルフォーセンがなぜ名古屋で順調にチームを作り上げることが出来なかったのか。俺はフェルフォーセンが日本の(名古屋の)フットボーラーに対して彼の持っているものを伝える術を持ち合わせていなかったのではないかと思っている。そして物事を伝える前提として「相手を理解する」という部分において、フェルフォーセンは二年間という期間を経てもなお日本のサッカーと自らのチームやその選手達についての把握が十分ではなく、自らの抱くフットボールに対するイメージをピッチ上で上手く具現化出来ない選手達に戸惑ったまま二年間が過ぎ去ってしまったのではないだろうか。
 果たしてフェルフォーセンは(彼より半年ほど日本への滞在期間が短いベンゲルのように)日本のサッカーや日本のプレーヤーの特徴についてスラスラと語ることが出来るだろうか。ひょっとしたら俺がそういった類のインタビューなどを見かけたことがないだけで十分な知見があるのかもしれないが、ひとつ確実に言えることは、彼が日本代表監督に推されることがあったとしても、彼の口からは決して「日本のサッカーを日本化する」という言葉は出てこないだろうということだ。そしてそれは毎日接していた自らのチームの選手達に対しても当てはまる。彼は選手達の特徴をどう把握し、どのポジションで誰と組ませて起用すれば各々のプレーヤーの能力を引き出せると考えていたのだろうか。少なくとも二年間でその答えは見えなかった。

 プロのコーチとして見た場合に、もうひとつ俺がフェルフォーセンに対して抱いていた不満は勝敗を決するようなツボを見極める眼に欠けていたことだ。まるで試合に向けて組み上げたプログラムの答え合わせでもするかのようだった彼は選手交代の枠を使い切らないことも多かったし、交代策自体も決して上手いとは言えなかった。選手交代によって試合展開を変え良い流れを持ってきたような記憶はほとんどないし、むしろ相手のセットプレーの直前に選手を交代して失点したり、試合に没頭するあまりか選手達のSOSに気付かずに負傷退場の交代が遅れ、むざむざ一人少ない状況で戦わせるハンディをチームに背負わせることも度々あった。
 選手交代だけではない。例えば現代サッカーにおいて勝敗を決する鍵となることも多いセットプレー。バルサ時代のクライフはセットプレーのトレーニングをしなかったというが、フェルフォーセンもセットプレーにはそれほど価値を見出していなかったのだろうか。シーズン終盤に(おそらくキックが正確という理由で)プレースキッカーに指名されていた吉村を見るにつけ俺はその思いを強くしていった。俺はコーナーキックをこんなにGKに直接キャッチされるキッカーを見たことがない。しかもその手のプレーが弱点のはずの川口(磐田)や天皇杯ではアマチュアのGKにポケットキャッチされている有様なのだから話にならないと俺は思うのだが、あれもフェルフォーセンの指導なのだろうか。だとしたら狙いどころを間違っているとしか俺は思えない。

 フェルフォーセンが伝えたかったフットボールは二シーズンに渡って名古屋が見せたものとは全くの別物かもしれない。だが彼が二年かけて作り上げたチームは、シーズン中に何度も気持ちを感じさせないような大敗を喫し、トレーニングマッチとは言えアマチュアや大学生にいともたやすく敗北を繰り返し、ピッチ上では得点を奪いに行く意識が希薄で攻撃に連動感がなく、最終ラインでの無意味な横パスが横行するチームだった。そしてそんなチームは全てを象徴するかのようにアマチュアチームに敗れて二年間の歴史に終止符を打った。フロントはフェルフォーセンが引退を宣言しなければあと一年任せるつもりだったと言っていたが、俺は彼に任せたところでこのチームには彼のサッカーをより深く理解することによってもたらされる上積みよりも、そうした主にメンタル面に起因した負の要素が増幅されていったような気がしてならない。

 そんなフェルフォーセンの後は日本人監督にチームを任せた方が良いだろうと俺は考えていた。フェルフォーセンほどの世界レベルでの理論や人脈や経験がなくても、日本人のことを理解し、彼等の良さを引き出せるような日本人の指揮官、それが理想(というか現状の名古屋にとっては優先される事項)だと思っていた。しかしクラブが出した結論は切り札・ストイコビッチの投入だった。クラブの成績(戦績)だけでなく、豊田スタジアムで開催する浦和戦がなければほとんどジリ貧の観客動員など様々な要素を考えての結論なのだろう。
 正直ピクシーの監督就任は時期尚早だと俺は思った。クラブの財産と言ってよいピクシーで失敗した時のリスクを考えると、もう少し選手そしてクラブが成熟し磐石の態勢を作ってから三顧の礼をもって迎え入れるのがいいと思ったからだ。既に選手ではないピクシーはクラブとして困り切った状態で救世主として頼るような存在ではもはやない。どうしても監督として泣きつくなら(来てくれるかどうかは別として)クラブ唯一の成功例でもあるベンゲルだろう。
 ただ決まってしまったものは仕方ない。あとは「失敗は絶対に許されない」という覚悟をみんなが持ってクラブ、サポーター一丸となってピクシーをサポートするのみ。ここまでの動きを見ていると幸いクラブはそうした自覚を持っているようだ。あとは常に自覚よりも甘えが目立つ選手達がピクシーの監督経験を言い訳にしないで日々のトレーニングからゲームに取り組めるか否かにかかっている。何ひとつ成し遂げたわけでもないはずなのに不平・不満だけは一人前の名古屋の選手達のプロとしての自覚、名古屋の選手であることの誇りが問われる一年になるだろう。
 というわけでこのブログでもとりあえずピクシーは全面的に応援します。それはプレーヤー時代からピクシーを見てきた立場としては当然であり、ある程度長い眼でということも含めてその評価が甘くなるのは仕方がないところ。ただ俺はピクシーの監督経験がどうだとかライセンスがどうだとか言われることに関しては(確かにピクシー自身も監督としては実際にやりながら学ぶことも多々あるだろうが)意外と不安よりは期待の方が大きい。プレーヤーとして世界トップレベルでプレーし、数々の名将の薫陶も受けてきたピクシーのサッカー観を俺は信頼しているし、フェルフォーセンが躓いたのではないかと書いた日本人選手とのコミュニケーション(選手達へのアプローチ)についても、彼のカリスマや日本人への理解、そしてクラブへの愛情がそれを助けてくれると確信している。そして彼のファイティングスピリット。今年のチームに最も欠けていた要素をピクシーは持っている。

 ピクシーのやろうとしているサッカーは「4バックを採用しそうだ」ということ以外まだ伝わってこないが、彼の現役時代からの言動から察するにDFラインを下げて守るということはしないだろう。そして玉田や深井といった左利きのアタッカーを右サイドに配置する。なんとなくそんなイメージがある。なんだかここ数年の育成モードからいきなり目標は優勝だなんだとトーンの変化が著しいが、俺はいきなり結果が出るとは考えていないし、今シーズンは「スーパーハードワーク」と「攻撃的」をキーワードに、とりあえず結果よりも内容で見る側を魅了するようなサッカーをしてくれることを期待したい。
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by tknr0326g8 | 2008-01-27 01:10 | Topics & Issues
ストーブリーグ2008 vol.2
■本田の海外移籍
 オランダのVVVという正直よく知らないクラブへの移籍が現実味を帯びてきた本田の海外挑戦。この是非については他人がとやかく言う問題ではないし、とても難しい判断だとは思うが、俺から一言言わせてもらえるならば「あと半年待て」という感じだろうか。

 「あと半年」という部分からも分かるかと思うが、俺は本田が早い時期に海外へと活躍の場を求めることは基本的に賛成だ。その理由は今シーズンの本田が名古屋においてもはや伸びしろ(得るもの)を失ってしまったかのように感じたことにある。俺はかつて本田を中田(英寿)に例えて「どのような環境でも伸びて行ける選手」と書いたことがあるが、今シーズンの本田は、高校を卒業して名古屋に入ってから初めての「停滞」を感じさせた――むしろ高校時代の方が良かったのではないかと感じることさえあった――し、正直な感想として「このクラブ(名古屋)でこれ以上プレーしていても本田にとっては貴重な時間とともに失うものの方が多いのではないか」という疑念が浮かんでくることもしばしばだった。今シーズンの本田はそれぐらいに肉体的にもそして(むしろこちらの方が問題なのだが)精神的にも良いパフォーマンスを見せられていなかったし、ようやくその両面のバランスが取れ良い形を見せられたのが海外移籍という目標が見えてきた最終節の千葉戦だったというのはなんとも皮肉な結果だった。
 本田が試合に集中し切れていなかった要因はいくつかあると思う。五輪予選、A代表の合宿、そしてJリーグを行ったり来たりしていたことによる肉体的な疲労、チームの成績、やっているサッカー、周りの選手のレベル、そしてそれらを全て含めた意味で本田やクラブを取り巻く環境。本田にとって今の状況から抜け出してさらに高みを目指すためにはこの環境を変えるのが一番だという考え方は真っ当だ。
 過去二年間で中村や藤田(については藤田自身の衰えもあって)を追い抜いてしまった本田にとってもはや見習うべき(手本とするような)存在は名古屋には存在せず、名実ともに名古屋のNo.1日本人(フィールド)プレーヤーとなった本田はすでにアンタッチャブルな存在になりつつある。だが今シーズンメンタル面で試合に集中し切れていなかった印象のある本田にとってこの環境はマイナスにしかならない。例えばまるで実験でもするかのようなお気楽さで繰り返されたノーチャンスなFK。果たして本田はオランダのクラブに移ってもまだまるで練習の延長線上のような緊張感のないFKを試合の中で連発するだろうか。そんなシーンを見てもなおベンチやチームメートは本田にキッカーを任せるだろうか。観客は「次こそは」とブーイングせず暖かく見守ってくれるだろうか。マスコミは「悪魔の左足」だのなんだのと持ち上げてくれるだろうか。FKに限らずともしばしば相手の右SBのマークを離して独走を許した時、本田にモノを言える人間はピッチ内外を問わず一体何人いるだろうか。今の本田にはより試合に集中できる厳しい環境が必要だと俺も思う。

 もし名古屋が来シーズンも継続の名の下に同じことを繰り返すようであれば、俺は本田の海外移籍を全面的に支持していただろう。だがピクシーが監督に就任すること、その方向性として攻撃的なサッカーを打ち出していることで、本田にも僅かながら名古屋での伸びしろが生まれたのではないかと思っている。ピクシーから教えられること、その意図するサッカーの中で果たす役割――なんとなくピクシーなら本田を左サイドではなく右サイドで使うプランを描いていたと思う――を考えると本田のキャリアにとってそれは決してマイナスにはならない。来年はおそらく本人が当面の目標としている北京五輪もある。シーズン途中で海外のクラブへと加入することのリスクなどを考えても――おそらく本田と代理人はそのあたりもしっかり調査しているとは思うし、本田の持っている本来のメンタリティであればそれも乗り越えられるだろうが――俺は名古屋でピクシーのもとであと半年プレーすることも本田にとっては悪くない選択だとは思うのだが。

 とまあここまでは本田というプレーヤーに焦点を当てて移籍を考えてみたが、名古屋というチームからすればこれは大打撃。ようやく手にすることが出来た自前のスターを手放す営業面はもとより、本田がいなくなったら誰が中盤でボールを収めゲームをコントロールするのかという大問題が名古屋にはのしかかる。確かに本田はシステムによっては使い辛いプレーヤーではあり、単なる左サイドということで考えればマギヌンや渡辺、阿部(場合によっては片山)といったメンバーで事足りるが、ゲームを作れる中盤のプレーヤーが藤田ぐらいしかいないことを考えると、今の名古屋においては換えの効かないプレーヤーだけに来シーズンに向けたチームの不安は大きい。ピクシーにとってはいきなりの難問であり逆風だ。

 というわけで、みんながHappyになるためにも、本田には半年後に出来るだけ多くの勝ち点(出来れば移籍金も)を置いて海外に挑戦してもらうわけにはいかないだろうか。「北京経由オランダ行き」でお願いします。

■大分DF三木獲得
 三木と言えば湘南時代に瑞穂で地面スレスレのボールをヘディングでクリアしようとして思いっ切り地面と額でボールを挟み込むように「トラップ」してしまい、それを拾った福田(健二)にごっつぁんゴールをプレゼントした印象しかないが、バックアップも含めて即戦力のセンターバックは名古屋にとって間違いなく補強ポイント。ピクシーがどういったセンターバックを必要としているのか定かではないが、フェルフォーセンのように特異なタイプを求めていないのであれば、Jでの実績がある三木は十分に計算が立つ補強と言えるのではないだろうか。
 ちなみに、これで水本はともかく茂庭はなくなったと思っていいんですかね?

■ディドのコーチ就任
 GK王国の次はGKコーチ王国ですか?というのは冗談で、これは一年遅いなぁというのが正直な感想。少なくとも俺はS級を取得したディドが職探しをしているというニュースを一年前に見た時点で、セフ&ドワイトと選手、フロントとの架け橋としてディド招聘を熱望していた。一年前にディドを迎え入れていれば、セフ&ドワイトの遺伝子をより確実にクラブへと残すことが出来ていたであろうことを考えると、この一年間のロスはとてつもなく大きい。あとはおまけで、ディドと一緒にマイクも連れて来てヨンセンの間近でトレーニングさせれていればもう少しまともに成長させることが出来ていたのではないかという気がしないでもない。
 とは言え、このタイミングであってもディドが名古屋に復帰することに関して俺はかなりポジティブに捉えている。その最大の要因はディドのコネクションで、まずディドと言えば、何と言ってもかつて「ヒディングを長良川に呼んだ男」である。結局ヒディングは長良川で名古屋の試合を観戦した後帰国しオランダで代表監督のオファーを受けたことで名古屋監督就任は幻に終わったが、今ほどビッグネームではなかったにせよその時点で既にPSVやバレンシアなどの監督を歴任していたヒディングを日本にまで呼んでくるディドの人脈恐るべしである。
 またディドと言えば岡ちゃんだ。札幌、横浜FMで監督とGKコーチとしてともに働き、岡田日本代表監督誕生の際には三たびタッグ結成の噂もあった。ピクシー-オシムラインは幻に終わってしまったが、代表とクラブの距離が近いことは決して悪いことではないし、その意味でも代表監督とラインを持っているディドは名古屋にとって貴重だ。
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by tknr0326g8 | 2008-01-04 02:38 | Topics & Issues
2007シーズン終焉
 組み合わせにも恵まれ久しぶりの上位進出が期待できるかと思われた天皇杯。しかし蓋を開けてみればJFLのHONDA.FC相手に0-2といういかにも名古屋らしい形で敗退し2007年シーズンは終焉を迎えることとなった。

 フェルフォーセン体制になってからチームが取り組んできた後方からのビルドアップがJFLのチーム相手に前からプレッシャーを掛けられるだけでままならない様を見ていると、一部の選手や良心的なサポーターが口々に言う「二年間の積み重ね」とやらが一体何だったのか?という疑問しか俺には浮かばない。むしろこの試合こそが「二年間の集大成」なのではないだろうかと。当初の予定よりもかなり早まってしまったが、そんな名古屋にとってのフェルフォーセンとの二年間を近いうち今シーズンのレビューで考えてみたいと思う。
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by tknr0326g8 | 2007-12-09 01:05 | Topics & Issues