開幕から4-4-2で臨んでいる今シーズンの名古屋で、左SHのレギュラーである本田の欠けたナビスコカップ・鹿島戦、普段右SHの中村が左に回り、右SHのポジションに入っていたのが今回紹介する山口Kだ。山口Kの本来のポジションはボランチ。しかし、攻撃面で決定的な仕事が出来るブラジル人のクライトン、今シーズン新潟からやって来て、気の利いたプレーで名古屋の守備に昨季よりワンランク上の安定感をもたらした北朝鮮代表のアン・ヨンハッ、サブには昨シーズンのレギュラーだった吉村と、名古屋が擁するボランチの層は厚く、今シーズンの山口KはおそらくこういったSHやSBでの起用が多くなって行くだろう。そしてそれ考えると、鹿島戦での山口Kのパフォーマンスでは物足りないと言わざるを得ない。
確かに右サイドを駆け上がる(そしてそれがチームとしての武器になりつつある)角田を生かすことや、相手の左SBである新井場の攻め上がりに対するケアを考えれば、攻撃に自重気味だった山口Kの判断は間違っていないかもしれないし、ひょっとしたらチームとしての戦術だったのかもしれない。しかし、俺はこの山口Kというプレーヤーをこのレベルの選手だとは思っていない。
山口Kはユースから昇格した年のナビスコカップでさっそくプロデビューを飾ると、同じくナビスコカップの浦和戦では途中出場ながら2ゴールという離れ技をやってのけ、その強運ぶりを発揮した。そしてそんなナビスコカップを皮切りに、リーグ戦でも着実に経験を積んだ彼は2003年に行われたワールドユースのメンバー入りを果たす。試合出場はグループリーグのコロンビア戦のみで、しかもコロンビアの「右」をケアする目的での(守備を強く意識した)左アウトサイドでの起用だったが、この国際大会は何事にも変えられない良い経験となったはずだ。ちなみにコロンビア(ユース)の監督からは、ツーロンで対戦した際の日本で印象に残るプレーヤーの一人として、「第二の稲本」と評価されていた。
と、ここまで書けば、京都からの「越境留学」で名古屋ユース入りし、アンダーカテゴリーでは代表のユニフォームにも袖を通してきたエリートは、着実にステップアップしているように思われる。しかし、この間の鹿島戦に限らず、俺の中ではここの所の山口Kが伸び悩んでいるような印象がしてならない。それは決して、得意なポジションで満足な出場機会(時間)が与えられないことと無関係ではないだろうが、昨シーズンを見ても山口Kにチャンスがなかったわけでは決してない。プロである以上言い訳は出来ない状況だ。
では山口Kとはどういうプレーヤーなのか。決して身体は大きくないが、中盤で労を惜しまぬ動きで粘り強いディフェンスをこなし、いわゆる「汚れ役」も厭わない。攻撃ではドリブルも出来る(とよく選手紹介に書いてあるがあんまり見ない)が、持ち味はやはりそのパス能力だろう。中盤でテンポ良くボールを散らすことも出来れば、タテにボールを入れることも出来る。そしてスルーパスを出せるセンスを持ち合わせる。鹿島戦の前には
「あまり自分で(試合を)作る方じゃないから」(大阪ニッカン)と謙遜なのか弱気なのか分からない発言をしていたが、そのサッカーセンスは間違いなく本物。俺は、山口Kがその気になれば中盤でゲーム全体を支配することだって可能だと思っている。
そんな山口Kの特徴を考える時、俺の頭に思い浮かぶプレーヤーがいる。それがチェルシーのマケレレだ。ああいうプレーヤー目指して欲しいなあ。マケレレっていうと、いわゆる「黒子」や「汗かき」のイメージが強いけど、それだけじゃなくやつの右足から繰り出される強く速いクサビのボールは、確実にチームの攻撃のリズムを作っている。そういう選手に。類稀なサッカーセンスを持つ山口Kならそれが出来る。
さらに言うなら、2年前のナビスコ・浦和戦で垣間見せた、「神」より与えられたとしか思えないエリア内での得点感覚。これは大事にしなければ。(笑)
というわけで、山口Kは俺の中では(ボランチとしては)吉村より評価が上(というか吉村には
別の適正があると思ってる)。次節広島戦、時差が殆どないとは言え、北朝鮮代表として平壌で2試合をこなしたアン・ヨンハッの出場は正直厳しいかもしれない。仮に出れたとしても、コンディションに不安が残る。ヨンハッの代わりにボランチに山口K使ってくれないかな、ネルシーニョ。そう言えば、クライトンと山口Kのコンビって見てない(試してない)気がするし。
見ていて小気味良いプレースタイルは確実に日本人受けするもの、山口Kが名古屋の中盤でレギュラーポジションを獲得し、さらに積極的で吹っ切れたパフォーマンスを披露するようになった時、瑞穂の観客は500人は増える。(笑) 本人も、ひょっとしたらサポーターも「地味」だと思っているかもしれないこういうプレーヤーが、抜群の存在感でゲームを牛耳っているのも悪くはない。